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第16話

体育祭は順調に進んでいく。 午前最後の種目となりアナウンスがかかると待ってましたと言わんばかりに疲労を越して気合いが上回っていた。 『午前最後の種目はクラス対抗リレーとなります。グランドの中央に集まってください』 放送の案内の通りに生徒達は中央に集まっていく。よし、と意気込んで向かっていると後ろから声をかけられ振り向くと駆け足で近寄ってくる朝風がいた。 「こやぎちゃんまだ元気だね」 クラスTシャツと下は短パンでスラリとした体型がなんとも眩しい。靴は某有名なスポーツ靴まで装備されていて朝風も気合い入っていると思う。 「やっとこの時がきた。全力で勝つ」 「こやぎちゃんらしいね」 ぽんと頭に手を乗せられると、心臓がきゅっとなった気がした。そんな優を知らず朝風は近くでストレッチをし始めた。 あれから朝風は特に何もしてこない。約束をきちんと守っていて今のように触れてくるがそれ以上はしてこない。それを望んだ自分と心はまさに逆の反応をしていてモヤモヤしたものが残っていた。 アナウンスがなりストレッチを辞めた朝風は立ち上がりいった。 「待ってるからね、頑張って」 (・・・言われなくてもわかってる) 言うことも全てかっこよすぎなのは優でもわかっている。女子が惚れるのはよく分かるがそれを打ち消し気持ちを入れ替えた。 リレーは同じクラスで次に渡すバトンはラストの朝風だ。 スタート開始の合図と共に自分に気合いを入れた。 5番手の優は4番手が走った頃にスタートラインに立った。自分のクラスは3位にいた。 沢山の声援の中、数メートルということろで走り出しバトンを受け取った。脚は軽くて風に押されるように前に進む。 (気持ちいい・・・) 早々去っていく景色を横目に大きく脚を振って1人、また2人と追い抜いてその先にバトンを待つ朝風を捉え、声が聞こえる。 「こやぎちゃん!」 他の生徒の声援の中はっきりと朝風の声が聞こえて更にグランドの土を力強く蹴って腕を伸ばしバトンを手渡した。 「あさ、かぜ、いけ!」 その時、うなづくように笑顔が見えて、走り抜けながら綺麗に走る朝風を目で追った。後ろの生徒との距離をかなり離してフィニッシュテープを通った。 「小谷木、小さいのによくやったな!」 「かっこよかったよ!」 直ぐにクラスメイトに囲まれて我に返って、小さいは余計だと言い返しながらも褒められクラスメイトの歓喜の声を聴きながら嬉しさを感じた。 クラスの女子が朝風のことを言っているのを聴いて、バトンを渡した時に見えたあの笑顔を思い出して心臓の音が強くなった気がしたがそれは走ったからだろうと思い込んだ。 午前の種目が終わりを告げて、昼食時間となった。今日は昨日凛が昼食作ってくるからと言っていて蓮、凛、朝風とで食べる予定でいた。 「じゃじゃーん!いっぱい作ったから沢山食べてね!はい、ゆーちゃんはお肉あげる」 「おい、凛。俺の野菜多すぎんだろうよ」 「蓮は野菜食べなさすぎだから。れーちゃんもどうぞ」 身内には厳しいが俺たちには優しく野菜以外もよそってくれる凛とそれをグチグチ言いながらも食べる蓮、そして先程走ったのに疲れを微塵もなく笑顔の朝風と食事を囲んだ。 食べたあとに蓮は飴を加えて横になり、いかにも食後に爪楊枝加えたおじさんにも見えるがそんな姿も顔が良いせいか様になる。 「午後だりぃーな。朝風、俺の分までよろしく」 「うーん、僕も体力持つかな」 「やる気がないのに顔がイケメン」 蓮はそう呟いた優に嫌味ぽく笑った。こう見えてもやる気ないとか言いながらもやる男だ。 「家でもこんな感じなのよ。ほっといていいよ。ゆーちゃんばんざーい」 「ばんざー・・・いや、なんで脱がすんだよ」 「汗拭いたらまた日焼け止め塗ろうと思って」 危うく誘導されるままに脱がされる所で服を抑えこんだ。 コーヒーを飲んでいた朝風と目があって、慌てて直ぐに自分でやれると言いはってついで着替えてくると立ち上がり更衣室に向かった。

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