17 / 22

第17話

何人かの生徒とすれ違って挨拶しながら更衣室に向かいドアを開けると誰も居なくて換気するように開けられた窓から生徒たちの声が聞こえた。 一先ず着替えるで窓を閉めると中は薄暗く湿ったような空気が漂っていた。 適当に入れたロッカーを開けて鞄から汗ふきシートを取り出して全身を拭くことにした。 「本当はシャワー浴びたいけどねぇーんだよな。・・・てか、ここ薄気味悪いし落ち着いて浴びてらんないよな」 「確かに幽霊出そうだよね」 「だから嫌な・・・うおっ!?」 脇立つ痺れが全身に流れて腰が抜けてしまい肩を驚いたと同時にロッカーの扉にぶつけてしまった。 「驚かすつもりはなかったんだけど大丈夫か?」 さらりと肩を撫でられたが大して痛みはなかった。ただ気づかない内に朝風がいた事が1番の驚きだ。 自分は怖いのが少々苦手で物音がさせず入ってくる朝風を密かに恨んだ。 「お、驚かすなよ!心臓止まるかと思ったたろう!」 「僕、忍者になれるかもね」 「こんな時代に忍者いるわけないだろ!」 ごめんと言いながら手を引っ張るように立ち上がらせてくれたのにそれに対してなんだか気まづく感じて何も言えなかった自分がいた。 「こやぎちゃんのおかげだよ、ありがとう」 「・・・別に全力でやっただけだ」 折角の話題を自らへし折るだけで会話が続かなくて無言が居心地悪くて新しいシャツを取り出して着ようとする寸前に無言を切るように朝風の一言で動きが止まってしまった。 「僕は君のために全力で走った」 それはチームのためなんだと言い聞かせて、戸惑いを隠すために素っ気ない返事を返して手を動かしたのに横からの視線を感じて汗ふきシートを落としてしまう。 落ち物を朝風は拾ってくれたが渡してはくれなくてそれをじっと見つめて少しの無言を作ってなんでもないと言って手渡し何もせず出ていった。 「2人とも待ってるだろうから僕はもう行くね」 前の朝風なら必ず何か仕掛けて来ていたのに何もしないのはこの間の約束があるからなのだろう。 「・・・何のために来たんだよ」 受け取った物をただ見つめてただ時間だけが過ぎていった。 「やっと帰ってきた!もう時間ないし塗り直すからここ座って!」 俺の姿を見つけた凛は少し怒ったように頬を膨らませていて、それですら可愛いなるのは顔が整っているからだろう。 託された位置に腰を下ろすと肌に塗られていく。 凛に触れられた感覚に前に朝風に触れられた感覚があいつも優しく触れてきたことを思い出しそうになって消し去った。 「お前、俺の妹に触られて乳首立てんなよ」 「ゆーちゃん私に興奮するんだ〜」 先程まで寝ていた筈の蓮は横から声をかけてきて、さらに凛までは茶化すようにやり取りが始まってしまい、ため息をついたが、隙を観て仕返しのように2人に飛びついて倒れ込む。 「お前ら・・・本当にデリカシーないと言うか俺をおちょくるのも程々にしな!」 じゃれあっている3人の声が広いグランドに響きかせながら 休み時間は過ぎていった。

ともだちにシェアしよう!