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第20話
「お、お前いつから居たんだよ!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。さっき来たばかりなんだけど2人で話してるみたいだから僕も混ぜて欲しくてね」
「凄い転がり方したね」と朝風が伸ばした手を渋々手を取り立ち上がった。なのに手を離してくれない朝風を睨むと笑顔を向けられる。
「足音も出さず来るとかお前忍者目指してんの?」
茶化したように言ったのににこりとするだけで何も言わないのが不気味だ。こいつのこういうところが苦手なのだ。見透かされたような、例えるなら蛇と蛙のようなもんだ。睨まれるまではいかないけど全身をくまなく見られて反応を楽しんでるかのような感覚だ。
「蓮、助けて」
「がんばれー」
数秒、いや1分程だろうか、それに耐え切れず助けを求めたが、本人はスマホを弄りながら興味なさげに欠伸をしていた。
「酷いな〜何もしていないよ。僕達の約束だものね」
その言葉に心臓が鳴る。忘れようとしたが何度も思い出される朝風の温もりと俺に触れる男らしいゴツい手、額に滴る汗と盛られたとはいえ余裕のない目・・・鮮明に蘇り熱くなる。
「離してくれ!俺帰るから!」
勢いよく朝風の手を振り払い、鞄を手に教室を逃げるように後にした。
生徒玄関に着いて1度落ち着かせるように深呼吸して今度はゆっくりと寮まで向かった。
* * 蓮side * *
「朝風ー、お前態とやっただろ」
「ん?なんの事を言ってるのかな」
とぼけたように言うが、少し怒っているようにも見えなくもないが牽制 されたようにも思えなくもない。前に体育祭の時に小谷木の乳首を触った時、こいつは見ていて怖いくらい睨んできた。
小谷木と話してる時に朝風からメッセージが来ていて、小谷木といると言えば朝風が来ないわけが無いし、教室に着くなり、直ぐに入る訳ではなく小谷木が自分の存在に気づいていない事を利用し殆ど話を聞いていたのだ。俺も似たようなものだから人の事を言えないがこれが意地が悪いというのだろう。
俺はめんどくさいことに首を突っ込みたくない派なのに意図的にそうなってしまったのは小谷木のせいである。
「前は怯えて逃げる小谷木ちゃんも可愛かったけど、今は忘れたいのに忘れられない快感と触れられてビクついて赤くなる小谷木ちゃん、色んな表情を見せてくれるから愛しいよ」
「うっわ、鳥肌たった・・・変態ナルシストだな」
最近、小谷木が朝風への変な態度を見るようになったのは小谷木が言ったようにその出来事がきっかけなのだろう。でも朝風本人は変わらずちょっかいを出している。たまに態と思い出させるような言葉と態度を見せると小谷木の表情が変わるから本当に手のひらで転がすように一段と楽しんでいる。
恋焦がれるように小谷木が去った方向を見て、1人盛り上がっている朝風に軽く引き、変態に好かれた小谷木に同情した。
「用事あったんだろ」
「ああ、そうだった。ホテルの招待券渡したくて・・・」
(小谷木、この変態を扱えるのはお前だけだ。頑張れよ)
密かに小谷木へのエールを送った。
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