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第16話
「嘘吐きなのは瑛士だろう。二十歳 のお前は俺に何て言った? 高校を出て、ちゃんとした会社で働いてるから心配するなって……彼女と同棲してるとも言ってたな。俺はすっかり騙されて、調べもしなかった」
自分とは違い声も荒げずに話す清高の言う事が、正論なのは分かっている。隠したのは本当だ。
(だけど、それでも……)
「ちくしょう……いつもそうだ。分かってる、アンタには敵わないって……もういっそ殺してくれよ。できないっていうなら……うぅっ」
いよいよ、考えるのが面倒になってきた。理屈では勝てないし、力でも敵わない。体の疼きも止まらないし、頭の中がぐちゃぐちゃだった。自分が何を求めているのかも上手く形にできやしない。だから、混乱した瑛士は安易に舌を噛もうとしたのだが、それは口内に差し入れられた清高の指に阻止された。
「……っ」
一瞬だが、清高の眉根に深い皺が刻まれる。
唸るような声で「止せ」と言われ、その迫力に怯んだ瑛士が彼の指を噛む歯を開くと、「二度とするな」と真摯に告げられ思わず素直に頷いた。
「ったく。お前は昔からそうだ。短絡的でひねくれてて、手が付けられない」
「……」
あまりにも散々な言われようだが、事実だから仕方がない。ならば放っておけばいいと喉元まで言葉が出たが、今回彼と接触したのは自分からだから、それも声には出せなかった。
口から抜かれた彼の指にははっきり歯形がついていて、うっすらと血が滲んでいるのが見て取れる。それを見て……彼の腕を撃ち抜いた時と同じ痛みが胸を占めるが、その意味を考えるよりも早く、尿道を犯すブジーを掴んだ清高がそれを引き抜き始めた。
「うっ……ああっ」
「だけど、俺にはなついてくれた」
「ひっ」
全てが抜け去ると思った刹那、再び奥まで挿し込まれ……痺れるような鋭い愉悦に悲鳴にも似た嬌声が上がる。何度もそれを繰り返され、まるで操り人形のように体がガクガクと痙攣した。
「こっちも……そろそろ具合が良さそうだ」
「や、あっ……やぁっ」
後孔を埋める玩具が一気に引き抜かれ、閉じきらないそこがヒクヒクと開閉するのが自分で分かる。
全てにおいて限界だった。
瑛士が受け身を強いられたのは、大人の慰み者にされていた中学時代までの事で、卒業してからは自ら鍛え、支配する側へとシフトした。なのに、今の瑛士はポッカリと空いた後孔を、清高の物で埋めて欲しいと心の底から願っている。
「さむい。きよたか……さむい」
急に体が冷えてきて、瑛士はガタガタと震えだした。極度の消耗に精神の方も耐えきれなくなっているのだが、そんな専門的なことは瑛士には分からない。
「もう、いきたい……」
「そうか」
弱々しく訴えかけると優しく頬をなでられて、思わず顔を擦り寄せれば、「分かったから泣くな」と放った彼に体を抱きしめられた。
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