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第17話

 ***  やりすぎたとは思わない。むしろ、想像以上の結果を得られて嬉しいとさえ感じていた。 「ここが寒いのか?」  上半身だけ起こした瑛士の背中を片手で支えながら、もう片方の腕を股間へとのばしていくが、抵抗はまるでない。緩んでいるアナルの中へと指を二本差し込むと、歯をガタガタとならしながら瑛士は何度も頷いた。   彼が二十歳、自分が二八歳の時、街で偶然出くわして以来、彼とは会っていなかった。交換したメールアドレスで時折連絡は取っていたが、それ以上踏み込むことが清高にはできなかった。  清高自身、仕事が忙しかったこともあるが、最大の理由は彼が、自分へと向けている思慕に気づいてしまったから。それが無自覚なのは分かったから、同棲している女性と二人、ノーマルな道を選んだ方が瑛士の為だと判断したが、それがそもそもの間違いだった。  何故なら、あとから調べて分かった事だが、清高が高校を卒業した後、叔父によって引き取られたと聞かされていた瑛士だが、蓋を開ければろくでなしの叔父によって、金づるにされてしまっていた。調査結果に間違いが無ければ、彼は中学の三年間、好色な大人達の慰みものにされていたのだ。  そんな生活から逃げ出した瑛士が、ヤクザの手駒に落ちる課程は想像に難くない。きっと瑛士は、清高と交わした約束だけを心の支えに、長い時間を自分一人で生きてきた。それは、『また約束を破るのか』という彼の叫びから容易に読みとることができた。  彼が二十歳の時に再会したのも、たぶん偶然などではない。  どんな気持ちで会いに来たのか今なら理解できるだけに、当時の自分の判断ミスが悔やまれてならなかった。 (もっと早く、気付いていれば……) 「やっぱり、泣いていい。好きなだけ泣け」  舌で目尻を舐めとりながら、柔らかな声音で囁きかける。同時にアナルの浅い場所にある快楽のツボを指で押し潰すと、喉を鳴らした瑛士が潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。 「わからない。たまに遠くから見るだけで、それだけで……良かったんだ。なのに、俺にしたみたいに……アキに笑いかけるから、あんな、何の取り柄もない、貧相なガキが……」  きっと、言っている事の半分ぐらいは自分でも分かっていないだろう。それは紛れもなく嫉妬なのだと教えてやりたい気持ちになるが、それよりも今はようやく裸に剥いた心を受け止めたかった。

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