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3 逢瀬
一学期中間試験中日 、土曜の午後。
恐らく最も小さいタイプのカラオケルームの片隅。
大我は薄暗い部屋、外からの死角に瀬峰 を引き寄せて、腰を抱く。
大我よりやや背の高い少年は、人懐こそうな大きな瞳を細め、長い前髪を耳にかけた。
そして、大我の背中に腕を回し、唇を重ねる。
瀬峰が軽く何度かキスをすると、大我は彼の唇を舌先で軽く舐める。
誘いに乗って瀬峰は絡みつくようにくちづけ、唇に舌を割り込ませた。
大我も彼の背中に腕を回して、濃厚なキスに応えた。
瀬峰は中学の同級生で、高校は違う。
進学して間もなく瀬峰は合コンの幹事を務め始め、大我も泉と共に早々に呼び出された。
その席で誰が気になるかと聞かれ、大我は堂々と瀬峰と答えた。
自分のことは差し置いて常に周囲に気を回し、大我にも忘れずに声をかけてくる。
気立ての良さが、唐突に気に入った。
瀬峰は冗談だろと笑ったが、大我は瀬峰に絡 んで離れない。
女子に関心を持たない大我のおかげで他の男子の選択肢が増え、女子たちも男子同士の絡みに喜び、合コンが盛り上がる。
その後瀬峰は三度ほど大我と泉を合コンに呼んだ。
泉は部活動を優先して参加しなかった。
見目の良い大我を目当てに女子が集まり、大我はいつも自分はバイだと言いながら、最終的に瀬峰を選ぶ。
毎回女子からの関心の高い人間に贔屓 にされる優越感からか、大我の急なキスにほだされたのか、高校一年の冬休み、四度目の合コンの帰り道、瀬峰は大我に落ちた。
泉が知り得ないだけで、大我の男への告白は、ほぼ後々成就していた。
大我が瀬峰のシャツに手を差し入れようとすると、瀬峰がその手首を掴む。
「ダメダメ、こーいうのは家に帰ってから」
瀬峰が笑いかけると、大我は瀬峰の胸にしがみつく。
「早く行こうよ」
週明けの試験の勉強道具を持参している。
今日は家に帰らない。
「まだ歌ってないだろ。二人だけだから、ゆっくり歌ってこ」
大我の頬にくちづけてソファに身を沈めた瀬峰の横に、大我も掛ける。
大我は安らいだ表情で、瀬峰の肩に身体を預けた。
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