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第23話

 思い出した。 「四つ葉……」 「おぅ」 「四つ葉、ちょうだい……」 「忘れてねーよ」  光一は、シャツの胸ポケットに入れて置いた四つ葉のクローバーを取り出した。  よろよろと身づくろいをする寿を、光一は見守っていた。  こいつは今から、大林の所へ行くんだろう。  幸せを呼ぶ、四つ葉のクローバーを持って、お見舞いに行くんだろう。 「な、俺からもよろしく言っといてくれな」 「え? 友利くん、来ないの?」  誰が恋敵の見舞いになんか、行くもんか。  まだ、いや、さらに大林への嫉妬心が膨らんでしまったというのに!  また今度な、と光一は手を軽く上げた。

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