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 またあの夢を見た。初めて人を殺した日の夢だ。今でも鮮明に覚えている。  あの時、俺はまだほんの小さな子どもだったから、罪には問われなかった。むしろ、俺は児童性犯罪の被害者として周りの大人から手厚い保護を受けた。  しかし、それは一度では済まなかった。  人を殺すことに快感を覚えてしまった俺は、俺をいじめようとした子どもを〝うっかり〟殺してしまった。前後の記憶は曖昧で、無意識に近い状態だった。  それからも自分の欲に負け、自分の中で悪人だと位置づけた人間を殺し続けた。その度に俺は色々な殺害方法を身に付けていき、殺した現場や遺体の隠蔽も巧くなっていった。時が経つにつれ、世間からは『殺された被害者』は減り、『行方不明者』が頻繁に出るようになった。  そんな時に、小学生の間で学校の七不思議と似たような存在として密かに噂になった、殺人依頼掲示板。初めは半信半疑だったが、書き込まれた依頼と一致する殺人事件のニュースを度々見かけ、どうやら本物らしいことを悟った。依頼を受け付ける旨を書きこめば、すぐに依頼は来た。標的は家庭内暴力を行っている男だった。  手を血に染めた回数は忘れた。絶望と憎悪の入り混じった視線を向けられたときの感情も、もう忘れた。  しかし、殺人行為を辞めた日は覚えている。  十四歳の誕生日から今までの一年間、一度も人を手にかけることはしなかった。  理由は単純だ。見つかれば、罪に問われるからだ。幾ら隠蔽が巧くなったとはいえ、万が一、ということはある。不安を抱えた状態で人殺しはしたくなかった。  欲が満たされず飢えた心の為に精神安定剤を服用していたが、殺したい欲求は消えてくれない。  誰か。誰でもいい。この手で、殺したい。  あの血の飛沫を受けたい。  肉を裂くあの感触が。筋肉を千切るあの音が。  欲しくてたまらない。  毎日その願いが脳を埋め尽くし、耐えきれない時は野生動物を殺した。生きたままぐちゃぐちゃに。死してなお、原型を留めないくらいに。そうして暫くすると、以前は感じることのなかった酷い罪悪感に苛まれるのだ。  俺は狂っている。こんなに狂っている俺が生きていてもいいのか。  そう考えて、すぐに頭を振る。  どうせ俺が生きていても死んでも世の中は変わらない。俺は、ただの石ころに過ぎないのだ。  そして俺は両親を殺してしまった。

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