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 無意識だった。  両親に非があったわけではない。俺が殺人衝動を抑えられなかっただけだ。  意識が無くなる前に見たのは、目の前に置かれた雪のように白いクリームの上に、ぽつぽつと落ちている血のように赤いイチゴのホールケーキと、両親が仲良く夕飯の用意をしている風景。  気がつけば俺自身が赤い血の海にポツンと立っていた。足元に転がるのは先程まで笑顔だった両親。無意識でも温情はあったのか、普段ならぐちゃぐちゃに叩き潰す顔が綺麗に残っていた。その顔から笑顔は消え去っており、代わりにこの世の終わりを見たような表情が貼り付いていた。  そりゃそうだろう。実の息子に突然包丁の切っ先を向けられたのだから。  首の動脈を切ったのだろうか。床だけでなく、俺自身も相当な血を浴びていた。  頬に付いている血を舐めとった。今まで感じた何よりも、鉄臭かった。だがそれが俺が生きているということを改めて自覚させた。  自分の欲望に負けた俺が生きて、何の非もなくこんな俺をここまで育ててくれた両親が死んだ。  つう、と頬を何かが伝った。両親の血とは違う、自らの体から流れ落ちた液体。覚えている限り、生きていて初めて流した涙だった。  右手から血塗れの包丁が滑り落ち、硬い床に当たって、カツン、と鳴った。そのまま包丁は少し床の上で踊って、静かになった。  ああ、俺は今とてつもなく大きな罪を犯してしまった────。  それから約四ヶ月後、俺は罪を犯した少年たちが通う高校へ行くことになる。

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