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「ちなみに俺達は普通組だから」  早くも復活した鈴木が長谷川の肩に手を乗せながら言った。直後に長谷川に叩き落とされていたが。 「補足しておくと、あの不良さんたちみんな生徒会役員だから」 「……は?」 「ここでは罪の重さが絶対です。ね?」  花咲が苦々しく笑う。その意味を理解して、俺は首を竦めた。改めて実物を目にすると、この学園が如何に狂気に満ちているかがわかる。犯罪者の学校で、罪の重い奴を上に立たせて何をしたいのか、甚だ理解に苦しむ。 「馬鹿みたいに髪の毛染めてるよな。あれ将来禿げるぞ」  長谷川がやっと窓の外から目を離し、不良を見ながら溜め息を吐く。現実的だが髪の心配か。 「生徒会役員には親衛隊ってのもいるらしいよ」 「あー、それ俺も聞いたことある。男子ばっかだとみんな狂っちまうのかねえ」  感慨深げに鈴木が言う。親衛隊って昔のアイドルの時代の奴らじゃないのか? 馬鹿だ。何がしたいのか全く理解できない。 「生徒会に近付くと制裁ってのもあるらしいね」 「そうそれ! 俺一回うけてみてえ!」  そう言って同意を得たいのか、俺を見る鈴木。何を期待してるのか分からないが、キラキラした目でこっちを見るな。 俺が首を縦に振らないのを感じ取ったのか、鈴木はまた花咲と話し出した。その様子をぼーっとしながら見ていたら、不意に何かが眼前にフワッと浮いた。  気付けば、辺りは真っ黒で、色がついているのはその浮遊物だけ。それは紛れもなくあの時の両親の生首。しかし、顔は二つあるにも関わらず首は一つしかなく、まるで無理やり首の部分だけを押し潰して引っ付けたように、歪に混ざり合った首と呼んでいいのかも分からない肉片になっていた。その『首』につけられた傷口はぱっくりと割れていて、肉の断面を俺に晒しながらそこからまき散らす血で周りを赤く染め続ける。  それは俺にじわじわと近づきながら、俺へと笑いかけて──。 「……──じわら、藤原!」 「えっ?」 「何いきなり自分の世界へゴーしてんだよ」  気付くとあの奇妙な生首は消えて、鈴木の顔が間近にあった。大きめの目が俺を心配そうに見ている。 「……すまん」 「いいけど、疲れてんのか? 顔真っ白だぞ」 「あ、いや……。大丈夫だ」 「大丈夫って顔してないぞ、藤原」  あまり俺に興味がなさそうだった長谷川にまで言われてしまった。そこまで顔色が悪いんだろうか。まあ、あんな白昼夢を見るくらいには疲れているか。  そろそろ部屋に戻ろうと花咲に声をかけようとすれば、隣にいたはずの花咲の姿はそこになかった。 「花咲は?」 「仕事。あいつ情報屋やってんの。すぐ戻ってくるよ」 「情報屋か。可愛い顔して中身は侮れないな」 「だよな! 最初はギャップにびっくりでさ。よくギャップ萌えとか言うけど、あのバージョンは止めてほしい」  そう言って笑う鈴木に釣られて、俺も顔を綻ばせる。そうしていると、喧噪の中から花咲らしき足音が近づいてくるのが耳に入ってきた。振り返って足音の方を見れば、確かにそれは花咲で、俺に向かって微笑みながら手を振るその姿の少し後ろに、件の不良グループがいた。  花咲が手を下ろした次の瞬間、俺の視界は突如真っ赤に染まった。

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