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 校舎を出て少し歩くと、中規模のショッピングモールのような建物が見える。これが、俺たちのいう『スーパー』だ。基本的に学園の敷地から出ることができない俺たちは、生活に必要なものをここで買っている。普段は食料品しか買わないので、他にどんなラインナップがあるのかは俺もあまり把握していないが、花咲たちから聞いている話では、テレビゲームや漫画等の娯楽品以外はここで確保できるようだ。  いつものように店内に入って、普段の癖で食料品売り場へ向かおうとした俺を、花咲が引き留める。 「藤原君、食べ物は買わないでしょ?」 「あ、そうだったな」  照れ隠しに頭を掻きながら、スラックスのポケットに乱雑に捻じ込んだ買い出しのメモを再確認する。ペンや画用紙等が足りないようなので、筆記用具売り場に行くことを花咲に伝えると、離れると合流が大変だからと、一緒に行動することになった。  筆記用具売り場は転入直後に一度訪れただけだったが、今回もその時と同じ感想を抱いた。一言、商品の数が多すぎる。それしか感じないほど、ずらりと並んだ筆記用具たち。種類やメーカーごとに分けられてはいるものの、逆に分け方が細かすぎて、大量に挟み込まれたネームプレートが重なりよく見えない。花咲にも手伝ってもらい、それでも悪戦苦闘しながら、なんとか目的のものを見つけて購入する。  俺の用事は済んだので、次は花咲の目的の場所へ着いていく。辿り着いたのは、布や糸などの手芸用の商品が置いてあるところだった。かなり限られた人にしか必要のないものだとは思うが、雉学祭では使うクラスが多いのだろう、俺たちの他にもちらほらと生徒がいた。  花咲は迷うことなく一直線に布が沢山置いてあるところに向かい、一つ一つ手に取りながら真剣に考えている。何を作るのか聞けば、スーツに合わせるネクタイだという答えが返ってきた。そういえば、戸田がスーツを作ってほしいと花咲に頼んでいたような記憶がある。流石にそれは無理だと突っぱねていたが、この様子だと何か一つは手作りでと更に頼み込まれたのだろう。にしても、そもそもネクタイですら手作りできるものだとは知らなかった。料理もそうだが、花咲は手先が器用らしい。  花咲はそのまま暫く布を物色して、最終的に種類の違ういくつかの布を購入した。 「お待たせ!」 「ああ、じゃあそろそろ帰るか」  それぞれ購入したものが入った袋を下げてスーパーを出て、校舎へ入った途端、「圭佑! 藤原!」という呼びかけと共に、神沢先生が廊下の奥から此方へ駆けてくるのが見えた。 「ちょっと静利に伝言頼めるか」  俺たちの返答は待たずに、先生は一枚の紙を手渡してくる。受け取って紙に印字された一際大きな文字を確認すると、『外出許可証』と書いてある。 「炭酸だが、前の事件もあって学園の方では手配できないが、自己責任という形でなら発注していいって話だった。ただ、懇意にしてる店が、量が多いならキャンセルのリスクも考慮して、直接店まで来て発注してくれって言ってきたんだ」 「なるほど、僕らが行けばいいんだね?」 「話が早くて助かる。本来なら俺が行くべきなんだが、ちょっと色々立て込んでてな。雉学祭用の財布は静利に握らせてあるから」  じゃあ頼んだぞ、と俺と花咲の頭に軽く手を乗せて、神沢先生は早足で去っていった。

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