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第五章 我慢の限界

 ◆  最低限の家具しか置かれていない、生活感皆無な薄暗い部屋の奥に、その男子生徒は両腕を縛られて椅子に座らされていた。両腕を縛る紐は椅子の背に繋がれ、満足に動かすことすらできない。 「嫌だ! 離して!」  男子生徒は小刻みに身体を震わせながら、大声でそう叫んだ。そんな男子生徒を嘲笑うように、周りに蠢く何かが、男子生徒の服を脱がしていく。 「止めて、やだ、いやっ!」  恐怖と嫌悪感でぶわ、と目から溢れる涙。身を捩って抵抗する男子生徒を、少し離れた所から壁に持たれつつ吟味するように眺める人物が、二人。 「さすが、嫌がってる顔も可愛いな。な、立原」 「だな。山中が見初めただけあるわ。本気で泣かせてえ」  立原は不敵な笑みを零しながら、ねっとりとした視線を服がはだけてぶるり、と身震いした男子生徒に向ける。 「なあ、花咲?」 「……っ藤原君が目的なんだね!?」  花咲の言葉に、立原は、はっ、と鼻で笑い、わざとらしく眉を潜めて肩を竦めた。 「だって俺、藤原に殺されかけたんだぜ? 山中だってそう。そりゃあお返ししなきゃなあ」  再び、立原の表情が怪しげな笑顔に転ずる。 「藤原君はもう無差別に人を傷付けたりしない!」  花咲は涙で潤む目で立原を精一杯睨みつける。だが、その行為は反対に被虐心をそそってしまっただけだったようで、立原は更に笑みを深くし、隣に立つ同じ表情を浮かべる山中へと目配せをした。 「ま、お互い楽しもうじゃん?」 「山中の言うとおり。優しくしてやるから、な」  目配せを受けた山中の言葉に、立原が同調する。その言葉が引き金になったかのように、その部屋にいた他の男子数名が、一斉に花咲の露わになった白い肌や胸の突起に指、そして舌を這わせ始めた。 「ゃっ……あっ、ぁあ……っ!」  花咲の敏感な体は、与えられる甘い刺激にすぐに反応し、赤みがかって汗ばんでいく。快楽を堪えようと歪められた顔から吐き出される息には、熱と共に耳を溶けさせるような淫靡な音が混じり出した。そんな花咲の姿は、立原と山中を興奮させるのに十分だった。 「やっべ……、ここまでとは予想以上……」 「ああ……早く挿れてえな……」  既に興奮からか息を荒くしている山中の言葉にそう答え、立原は無意識に生唾を飲み込んだ。その間も花咲は次々と与えられる刺激に、声を堪えきれずに嬌声をあげる。 「ぁあっ、ぃ……っ、んぁあ……!」 「まじかわいー……なあ、立原。手ェ出していい?」 「あ? 俺が先にやるって決めただろうが。テメェは腕怪我してんだから大人しくしてろ」  山中の提案を、立原は右眉を吊り上げてそう切り捨てた。 「はあー? ずっりー。俺、藤原のときもいじってねーんだけど?」  山中が口を尖らせてむくれる。立原はそんな山中を無視して、花咲に近付いた。 「っあ、ぁぁ……っ」 「何お前ら、勃ってんのに触ってやってねえじゃん」  直接刺激を与えられていないのに、そそり立って先走りを垂らしている花咲の自身の先を、立原は指先でピンと弾く。 「っああぁ!」  急に来た鋭い感覚に一気に達しそうになる花咲。だが、咄嗟に唇を思いきり噛んで痛みを作り、その刺激を必死に減退させる。それが花咲に出来る唯一の抵抗だった。

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