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意識が浮上した俺の目が捉えた景色は、見たことのない場所だった。頬に当たる皮の感触から、どうやらソファーに寝かされているらしいことを知る。周りは静かで、人の気配はしない。
「……っ」
怠さを残す体を起こして周りを眺める。寝かされていた部屋は、恐らく教室なのだろう、黒板が前後の壁に取り付けられている。だが、教室だと確信を持てなかったのは、この皮張りの黒いソファーや、床に敷き詰められた毛並みの良さそうな絨毯、そして大きな大理石のテーブルに、頭上から神々しい光を落とすシャンデリアなど、おおよそ教室には置いていないはずのものだらけだったからだ。
「ここは……」
「生徒会室だ」
「っ!」
思わず呟いた言葉に返事が来て、弾かれたように声のした方を見ると、扉のすぐ側に俺の部屋には居なかった銀髪の生徒が立っていた。他の生徒と同じような着崩した格好だが、今までの奴らよりも、危険なオーラを放っている。周りを眺めたときには姿が見えなかったから、気配を消して音もなくここへ入って来れるほどの実力はある、ということだろう。
「……誰だ」
「俺のこと知らねえの?」
不思議な物を見るような目で見てくるそいつに、少し苛立つ。
「知る訳ないだろ」
ぶっきらぼうに言い返すと、そいつは片眉を吊り上げて、ふ、と口を歪ませた。
「じゃあ生徒会のメンバーも知らねえのか」
「興味がない。で、誰なんだ」
俺に問いかけるそいつを睨みながら、答えを促す。すると、そいつは何かを思い付いたような表情で俺の方へ歩を進め、俺の髪を乱暴に掴んでグッと顔を寄せた。
「っ……!」
「この学校の会長様だよ」
会長様とやらは、ニヤリと口角を上げて挑発的な視線を送ってくる。俺は痛みに顔を歪めながら、その視線に鋭い視線をぶつけ、低く唸った。
「……離せ」
「あれ、反応ねえのかよ。つまんねえな」
会長は途端に不機嫌な顔になって、荒々しく俺の髪から手を離した。その反動で俺はソファーに倒れ込む。
「っ……」
「さすが噂の殺人者様、落ち着いてんなー?」
その言葉に、どくん、と心臓が大きく跳ねる。
噂の殺人者ということは、やはり、俺が山中を殺したことが、皆に知れ渡っているのか。
口内に溜まった生唾を呑み込みながらソファーから身体を起こして立ち上がり、会長に再度視線を合わせる。
「だから何だっていうんだ」
「……マジでつまんねえな、お前」
吐き捨てるようにそう呟き、会長は俺を押しやってソファーに勢いよく腰を下ろした。
「拉致紛いなことまでして、俺をここに連れてきた理由はなんだ」
「理事長から伝言がある」
会長の鋭い視線が俺を貫く。理事長からの伝言ということは、十中八九、山中の件だろう。どうやら俺の処分が決まったらしい。
なぜ会長を通して伝えられるのかが気になったが、余計なことを言えば更に機嫌が悪くなるのは目に見えていた。黙って耳を傾けていれば、会長が不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
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