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「Sクラス行きだってよ、お前」
言われた言葉の意味を、すぐに噛み砕くことができなかった。暫くしてやっと意味を理解して一気に強張った俺の顔を、不思議そうに会長が覗き込む。
「なんだ、嬉しそうじゃねえなあ? 最高クラス所属になって何が不満なんだ?」
「な、んで……」
「決まってんだろ。お前がクラスメイト殺したからだよ」
その通りだ。俺がクラスメイトを殺すような人間だと、理事長がやっと認識したから。俺はもう更生する余地を残していないと判断したから。だから、本来入れるべきだったSクラスに入れただけの話。
しかし、処分が軽すぎやしないだろうか。殺人罪で捕まったのにも関わらず、学園内でさらにその罪の上塗りをして、処分がクラス変更のみなんて。
いや、俺にとってはむしろ一番重い罰なのかもしれない。何故なら、Sクラスにはあいつが。俺を襲ったあの赤が。
俺の衝動の起爆剤が、居るのだから。
それも見越して、理事長はこの処分に決定したのか。自分の本能を制御出来なければ、破滅するのみだと。
「……嫌だ」
ぽろ、と零れた言葉に、会長が片眉を吊り上げる。
「嫌? んなこと言ったってもう変えられねえよ」
自業自得なのは分かっている。だが、もう自分を抑えられる自信がない。これ以上、人の道から外れたくない。だから、せめて。せめて大事な人たちを、この手で潰してしまわないように。
「……あいつとは教室を別にしてくれ」
「あいつ?」
「赤い髪の……」
「ああ、橘さ……のことか。俺がどうこう出来る問題じゃねえな、それは」
会長が大袈裟に溜め息を吐く。
橘っていうのか、あの赤髪。
屋上でのことを思い出して、無意識に身体が小刻みに震え出すのを、自分を抱くようにして抑え込む。
「ま、橘は生徒会室に入り浸ってっから教室には行かねーよ」
「……? そいつは生徒会役員なのか?」
確か花咲はそうは言っていなかったはずだが。
「ちげーよ。役員メンバーがえらく気に入ってるからな」
会長は白銀の頭を掻きながら顔を顰めて言った。その言動に、ふと疑問を覚える。
「お前は違うのか?」
確か花咲は、生徒会の役員は、みんな赤髪のことを気に入っていると言っていなかっただろうか。
俺の問いに、会長はぎくりと身体を強張らせる。
「あっ、いや、まあ……、ちょっとな……」
慌てて返事をするも、歯切れが悪く、言葉を濁す会長。何かを隠しているのか、言いづらいだけなのか。
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