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 会長の後ろを歩きながら、風で揺れる綺麗な銀色の髪を眺める。生徒会の奴らはろくでもないと思っていたが、気持ちの表現が下手なだけで案外普通の人間なのかもしれない。  寮内のエレベーターに乗り込んで、会長が最上階のボタンを押した。エレベーターの中には、俺と会長の二人だけ。沈黙に支配された箱の中で、現在の階の数字が変化していくのをぼーっと眺めていると、唐突に前から問いかけが飛んできた。 「何で殺したんだ?」  会長は前を向いたまま、此方を見ようとはしなかった。質問の真意を図りかねて、少し間が空く。それでも此方を見ない会長に、端的に答えを返した。 「殺したかったから、だ」  口にした言葉に、自分でも異常だと感じて、思わず乾いた笑いが口から漏れ出た。会長は、俺の答えに「そうか」と一言だけ返すと、また口を閉ざした。  チン、と小さな音が鳴り、エレベーターの扉が開く。エレベーターを出て外の景色に目を移せば、今までとはまるで違う風景が広がっていた。 「……高いな」  普段は幹しか見えないはずの廊下の外側には、生い茂る木々によって形成された森の遠く向こうに、微かに街らしきものが見える。俺たちが世間から弾かれて隔離されているという事実を、その景色は無理矢理再確認させてきた。 「まだ上がるぞ」 「ここが最上階じゃないのか?」 「ここは一般生の居住スペースだ。Sクラスと生徒会はこの上に部屋がある」  天を指差しながら、会長は廊下をどんどん進んでいく。置いていかれないように早歩きでその後を追えば、会長は突き当たりの部屋の前で足を止めた。 「ここは……?」 「中に専用のエレベーターがある」  俺の問いに答えつつ、胸ポケットから取り出した金色のカードキーをその部屋のドアに差し込み、会長はドアを開けた。  部屋の中に入っていく会長の後ろから、おずおずと中を覗いてみれば、確かに会長の言うとおり、エレベーターのみがそこに配置されていた。部屋の中にエレベーターという不思議な光景に呆気に取られていると、早くしろ、と会長からの注意が飛んでくる。会長の真似をして土足のまま部屋に入り、そのエレベーターに乗り込めば、すっとエレベーターの扉が閉まり、更に上へと俺達を運んでいった。  目的の階にエレベーターが止まれば、そこもまた部屋の中だった。会長に続いて部屋を出れば、少し異質な雰囲気の廊下がそこにあった。  それぞれの部屋の廊下に面している窓には、頑丈そうな隙間の狭い窓格子が付けられており、檻を彷彿とさせる。玄関扉は見るからに鉄で出来ており、塗装も全くされていない。まるで監獄島のようだ。  本当に、ここがSクラスと生徒会のメンバーのフロアなのだろうか。あの豪華な生徒会室とはえらい違いだ。 「こっちだ」 「……ああ」  会長が向かった先は、エレベーターのあった部屋から一番遠い部屋だった。  先程から何度も見てきた窓格子と鉄の扉が、その部屋にも取り付けられている。 「ここはカードキーじゃねえんだ」  そう言いながら、会長は今度はズボンのポケットから物理的な鍵の束を取り出し、そのうちの一本を扉のノブの少し上にある鍵穴に突っ込んで回す。ガチャ、と普段聞いている音より二倍ほど重たい質感を持って、扉の鍵が開いた。  重たい扉を開けば、中はそれほど前の部屋と違いはなかった。ただ、テレビはなく、本当に生活に最低限必要な家財しか置いていない。  半開きの玄関扉に凭れながら、会長が鍵の束をくるくると指で回す。 「後で鍵は持ってきてやるよ。これはスペアだから」  じゃあな、と言葉を残して、会長は廊下へと姿を消した。

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