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ガチャン、と無機質な音を鳴らして閉まった玄関の扉。ふとその扉に違和感を感じたが、違和感の原因が分からず頭を捻る。もやもやとした感情のまま、部屋の中を細かく見ていくことにした。
花咲といた部屋とは、そもそも部屋の数からして違っていた。ここは一人用なのか、リビングとキッチンを除いて部屋が一つしかない。寝室として使うための部屋らしく、セミダブルぐらいの大きさのベッドが置いてあるだけだ。リビングにはローテーブルと二人掛けソファーのみ。無駄なものは一切なく、ただ飯を食べて寝る為だけの部屋として認識した方が良さそうな具合だ。
今まで過ごしてきた一般生の部屋より大分と質素なこの場所で、本当にあの赤い髪のあいつや、会長を含めた生徒会メンバーが過ごしているのかと疑問を抱く。
何かがおかしい。直感がそう告げる。
しかし、疑問を解決するための情報が少なすぎる。うんうんと唸っても、そもそも無いものは捻り出せない。ひとまず、会長が戻って来てから、俺が感じている違和感について聞いてみることにしよう。
そう考えて、ソファーに腰を下ろしてスペアキーを取りに行った会長の帰りを待った。
しかし、待てども待てども会長が戻ってくる気配はない。せめてもの時間潰しにと、一学期の授業内容の復習をしながら、襲い来る睡魔に勝てず途中で少し眠ってしまったが、それでも依然として会長の姿はなく、寝ている間にスペアキーが置かれていることもなかった。
真上にあった太陽は徐々にその高度を落としていき、部屋に入ってくる日差しが作る陰も大分と長くなってきた。さすがに遅すぎる、と様子を見に行こうとした俺は、玄関まで来てやっと感じていた違和感の正体に気付いた。
「──ん?」
ドアノブが、ない。ドアを開けるために必要不可欠なそれが、この鉄製の扉には見当たらない。困惑した頭で、とりあえず扉を押してみるものの、そびえ立つ壁のように、扉は一ミリたりとも動く気配はなかった。
どういうことだ。これでは外に出られない。──いや、出さないようにしているのだろうか。
「……まさか」
この部屋に辿り着くまでに見てきた、鉄格子付の窓が脳内に浮かぶ。まるで監獄島? いや、違う。ここは正真正銘、監獄だ。犯罪者だらけの学園で、さらに罪を犯した者に相応しい終着点。俺は、会長にまんまと嵌められたらしい。
どうすればいい。大人しくこのまま外界からのアクションを待つしかないのか。しかし、やられっぱなしでは気がすまない。最後にここに戻ってくるとしても、俺を嵌めた会長には一発くらい食らわせてやりたい。
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