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 何かここから抜け出す策はないかと、部屋をうろうろと徘徊しながら思案する。  扉を壊すのは恐らく無理だ。部屋に入ったときに見た扉の厚さを考えると、生身の人間の力でどうこうできる代物ではない。扉とは反対側の窓から出て下の階のベランダ辺りに降りようかとも思ったが、窓の大きさはかなり小さく、恐らく俺では通り抜けることができない。だとすれば。  寝室用の部屋へ向かい、廊下に面する窓を開けた。窓の向こうには、頑丈な鉄格子が外界とこの部屋を分断するように鎮座している。その鉄格子に手を掛けて動かしてみると、緩くだが前後に揺れた。 「……動く」  鉄格子の付け根部分をよく観察すれば、壁に嵌め込まれていたボルトが何個か取れかかっていた。ボルトの周りの壁の破損具合から見るに、経年劣化というより、無理矢理鉄格子を外そうとした名残のようだ。俺の前にも、幾人もの生徒が、何とかここから抜け出そうと必死に足掻いたのだろう。外側からは分からなかったが、鉄格子の内側には何ヵ所か血のようなものが黒くこびりついている。  これなら外れるかもしれない。中央に力をかければ、全体的に外れそうな気がする。  先人たちの行動に感謝しながら、鉄格子を両手で掴んで、自分の全体重をかけて鉄格子を廊下側へ押していく。ほんの少しずつだが、ボルトが壁から押し出されていくのを確認した。  いける。これなら。  歯を軋ませながら踏ん張っていた足が、フローリングの上を滑りそうになり、左手で窓枠を掴んで体を固定し、更に力をかけた。 「……っクソッタレ……!」  息を止めて自分の持てる力と体重で鉄格子へと圧をかけていく。右の掌に鉄が食い込んでくる痛みに耐えながら、それでも何とか外へと出るために必死に力を込め続けた。  徐々に広がっていく鉄格子と窓との距離。もうすぐ、もうすぐだ。  そして、最後の一押しをした瞬間、バキィ! と大きな破壊音を廊下に響かせながら、鉄格子が壁から剥がれた。そのまま重力に従って廊下へ落ちていく鉄格子。抵抗力を失った鉄格子を掴んでいた俺の体は、込めていた力を抜く暇も与えられずふわりと浮いて、鉄格子の後を追いながら廊下へと投げ出された。  受け身を取ることも出来ず、廊下の床へ体を強かに打つ。その痛みに、食い縛っていた歯がぎり、とずれた。抜けたボルトに体が刺さらなかったのは、幸運だったのかもしれない。 「ってぇ……」  言葉を吐き出しながら、体に鞭を打って立ち上がるのと、エレベーターがあった部屋から見覚えのある人物が出てくるのは、ほぼ同時だった。

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