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その言葉が合図だったかのように、一斉に背後から生徒たちが俺に襲いかかってきた。咄嗟に水野を壁の方へ突き飛ばして巻き込まれないようにしたが、直後に繰り出された生徒の蹴りが避けきれずに脇腹に当たり、内臓を押し潰される感覚に思わず呻き声が漏れる。しかし、向かってくる生徒たちを避けながら何度か深い呼吸を繰り返せば、痛みは気にならない程度になった。桑山先輩の蹴りの方が、何十倍も重くて強烈だった。あれに比べれば、こんなものは蚊に刺されたようなものだ。
生徒たちは人数は多くても所詮は素人。モーションが大きく、隙も大きかった。的確に相手の急所を突き、一人ずつ片付けていく。最後の一人を地面に転がして、会長はどこかと辺りに目をやった瞬間、目の前に何かが迫ってきた。
「っ!」
咄嗟に避けると顔のすぐ横を何かが通る。遅れて、頬に鋭い痛みが走った。刃物で切られたか。
会長の腕が元の場所に戻る前に慌てて掴み、手に持っているものを見る。
「……ッ!?」
会長が手にしていたのは、先端に血の付いたアイスピックだった。人の柔い肌などいとも容易く突き破り、下手をすれば骨を砕くかもしれない代物。避けられていなかった未来を想像してしまい、顔から血の気が引いていくのが自分でもありありと分かった。
「お前……!」
「何で避けんだよ。大人しく刺されろよ」
会長は無機質な声でそう言い、アイスピックの先端を俺の首の方へ向けて、刺そうと力を込めてくる。それに対抗するために会長の腕を掴む手に力を入れるが、想像以上の力で押され、動かないようにするのが精一杯で、押し返すことは出来なかった。
「何を、企んでやがる……っ」
「企みなんざねえよ。俺はただ嫌いな奴を排除したいだけだ」
「随分な自己中だな……!」
「お前もそうなんだろ? だから殺したんじゃねえのかよ?」
会長が無表情で問う。
山中のことを言われているのだろう。少なくとも、嫌いだからなんて理由で手をかけたりはしない。
「そんな理由で人を殺したりしない!」
「じゃあどんな理由で殺したんだよ?」
会長の更なる追及に、俺は無意識に山中を殺した理由を考えてしまった。そのせいで一瞬、会長の腕を掴む手から力が抜ける。その隙をついて、会長がアイスピックを俺の首に刺そうと一気に腕に力を込めた。
まずい、と思っても既に時は遅く。急激に迫り来る死に為す術もなく、訪れるであろう激痛に備えて目を強く瞑った。
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