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「っぁあ……」
「声、聞かせろ」
顔を背けたことによって赤髪の方へと曝け出した耳に息を吹きかけるように囁いて、赤髪は俺自身を緩く扱き始めた。
「や、ふぁ……んぁ……っ」
唇を噛むだけの力は、既になくなってしまっていた。抑えようとしても、ぽっかりと開いた口からはひっきりなしに声が出てしまう。ゆっくりと確実に与えられる快楽に抵抗すらできず、翻弄され続ける。
わざとなのか決定的な刺激は与えられず、もう限界は近いはずなのになかなか達することが出来ない。それが精神的には救いであったが、身体にとっては拷問だった。
「も、やめっ、あっ……!」
「嘘つくなよ」
「あぁぁっ!」
緩やかな動きだった赤髪の手が突然激しい動きに変わり、張り詰めていた自身は呆気なく達してしまった。
「早いな。そんなに気持ちいいか?」
俺の精液で汚れた指に舌を這わせ、見せつけるように舐めとりながらにやり、と口角を上げる赤髪。
「っ……」
言い返す気力もなく、息を切らしながらそれを視界に映した目から、ぽろ、と雫が落ちる。縛られたまま自身の身体の下敷きになっている手首の痛み、自分より力のある存在に襲われていることへの恐怖、そして、何もできずにされるがままに男の矜持を傷つけられている悔しさ。それらが混ざり合ってぐちゃぐちゃになった感情が、その雫によって堰を切ったようにあふれ出てきた。
「……っく……っ」
「泣くな」
「……ひっ……っふ、ぅう……」
隠すことさえできない涙を、汚れていない方の指で優しく掬われる。
俺は、弱い。男に組み伏せられて、子供のように泣いて。
「見る、な……っ、く……」
「見えるんだから仕方ないだろ。痛くしないから、泣くな」
的外れなことを言う赤髪に、俺は泣きながら首を振った。
「ちが、っ……」
「何が違うんだ」
「も、いや、っ、こんな……!」
「……体はもっと欲しいって言ってるぞ」
ほら、と、赤髪は俺の後頭部とシーツの間に手を差し込んで、下半身を見せるように頭を持ち上げた。俺の視界に、熱を放出したのに何故かまた勃ちあがっている自身が映り込む。
何故だ。達してから、何も刺激は与えられていないのに。もうこんな行為、終わりにしたい筈なのに。
「な、んで……」
「自分に聞け」
自分に聞いたって分かるはずがない。俺の意思とは全く別のところで、身体は反応を示しているのだから。
赤髪の手の支えがなくなり、再びシーツへと戻った頭は酷くショックを受けて思考を放棄していた。しかし、感覚は正常、いや、むしろ普段より敏感になっており、後ろの孔に感じる違和感にも、脳より先に身体が反応した。
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