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初めて悪夢を見たあの日以来、俺は眠る度に悪夢を見るようになった。
毎回発狂したかのように叫びながら、目を覚ます。しかし、正気に戻れば、感じた恐怖心以外何も覚えていない。夢の内容も、認識できるのは見たことがあるという事実のみで、どんな内容だったのかは思い出すことができない。
最初は発狂する度に花咲が起きて必死に宥めてくれていたが、日に日に顔色が悪くなっていく花咲が寝れなくなってきていることは、誰が見ても明白だった。一週間の夏休みの途中から、花咲が学校で作業している間に寮で睡眠をとるようにしていたが、悪夢は俺を蝕み続け、ぼろぼろになっていく喉から捻り出す絶叫は自分だけでは止められず、近くの部屋の生徒たち──特に鈴木と長谷川に毎度駆けつけてもらうような状況に陥っていた。
花咲や鈴木たちにこれ以上迷惑をかけないために、俺はいつからか寝るのをやめた。寝ても悪夢で余計に体調が悪くなるのも、理由としてはあったと思う。だが、やはり寝ずに過ごし続けるのは無理があり、学校にいる時に突然気を失ったように眠ることが多くなった。
もちろんその時も悪夢を見て、みんなが作業をしている教室で、俺は何度も発狂した。
叫んで叫んで叫んで、喉が壊れてもひたすらに叫び続ける。
正気に戻った後に気付く、他の生徒たちからの疎ましそうな目が更に俺を苦しめた。
寝る、という行為自体が恐ろしくて眠れなくなり、睡眠不足のせいで失神して、悪夢を見て、余計に眠るのを体が拒否する、という悪循環だ。
そして、ろくにまともな睡眠をとれないまま、雉学祭の日を迎えた。
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