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 また悪夢によって目を覚ました瞬間、今までに無い衝撃を伴う頭痛が俺を襲った。 「──っ……!」  それはもう叫ぶ気力も一瞬にして奪うくらいの酷さ。鈍器でひたすら力一杯殴られているような。考えなくても、この頭痛の原因はトリュフだろうということくらい分かる。しかし、トリュフを食べてからの記憶がごっそり抜け落ちてしまっていて、くわえてこの激しい頭痛。  今の俺の状態では、状況をきちんと整理するのは厳しい。 「っくそ……痛い……」  ガンガンと痛む頭を押さえ壁に手をついて、よろめきながら寝室を出た。リビングの窓から差し込む日差しが廊下を明るく照らしていて、朝なのだということを把握する。  とりあえずリビングへ向かうと、花咲がキッチンに立っていた。 「あれ、おはよう……って、藤原君大丈夫!?」  俺の気配に気付いた花咲が振り返り、目を丸くして慌てて駆け寄ってくる。その姿を見てホッとした瞬間に、体から力が抜けて床に崩れ落ちてしまった。 「藤原君!」 「っ……は……ぁ……」 「どうしたの、しんどいの?」 「あ……たま……が……っ」 「頭が痛いの?」  花咲の問いに下を向いたままほんの少しだけ首を縦に振ると、ちょっと待ってて、と言って花咲が俺から離れた。少しして、首筋にヒヤッとする感触を覚えてゆっくり顔を上げる。 「これ、とりあえず首に当てといて」  首筋に触れている物はどうやら濡れたタオルのようだ。ひんやりとした感覚が少しだけ頭痛を和らげたように思えた。 「……あり、がと……」 「ううん。それより……一君が起こそうとしても全く起きなかったから、何かおかしいと思ったら……何したの?」 「長谷川に貰ったトリュフ……食べただけだ……」  それ絶対何か入ってたんだよ! と花咲が言う。俺も同意見だ。 「外出れそう?」 「ちょっと休めば……多分」 「分かった。代わりに漣君たちに働いてもらうから、今日は良くなったら他のお店回ろう?」  天使のような微笑みでそう告げる花咲に、俺も思わず顔の筋肉が緩む。が、すぐに痛みによって筋肉はまた緊張状態へと逆戻り。 「っ……!」 「ほんとに大丈夫……?」 「ああ……、……悪い」 「藤原君は悪くないから。さ、寝て寝て」  花咲に支えられてまた自分の部屋まで戻る。俺をベッドに寝かせた花咲が、あっ、と思い出したような声を上げた。 「寝たらまた悪夢見ちゃう……?」 「あー……多分……」 「んーでも僕いかなきゃいけないし……あっ、あの人と友達になったって聞いたけど、呼ぶ?」  花咲の言う人が誰なのか一瞬考えて、すぐに答えに至り無意識に顔を顰める。それに気づいた花咲は、ふふっと笑って子供をあやすように俺の頭を優しく撫でた。  「呼ばないでおくね。でも一人で大丈夫?」 「何とか……する……」 「そっか。じゃあご飯置いとくから、起きて落ち着いたら食べてね。藤原君来るまでは、僕は調理室にいるから、元気になったら調理室に来て」 「分かった……」  花咲が部屋から出て行って、俺はまた目を閉じる。これでまたあの夢を見たら、一生長谷川を恨んでやる。

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