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二学期 第一章 新学期の憂鬱
二学期。
それは色んな活動が活発になる故、波乱が巻き起こる時期。と同時に、学校にも慣れて余裕が出て来る時期でもある。
雉学祭から一週間後の代休明けの日、俺は主に後者の雰囲気を漂わせていた。
机にでろーん、と寝そべる俺。クーラーの効いた教室で、残暑など素知らぬ顔で快適な休憩をとっている。が、そんな俺の隣で慌てている生徒が約一名。
「やっば! 俺宿題やってないし!」
そう叫んだのは戸田。
罪人だらけの学校とは言え、夏休みの宿題はある。雉学祭の代休は、その宿題をまとめて終わらせる目的も兼ねて一週間という長い期間を取っているらしいのだが、戸田のように宿題そっちのけでひたすら遊び呆けて、結局宿題が出来ておらず、今になって死にそうな表情で必死にノートにかじりついている奴がクラス内にちらほらいた。比較的真面目な奴が多いEクラスでさえこうなのだから、他のクラスはそれこそ死屍累々といった様相だろう。いや、むしろ開き直っているかもしれない。
俺はというと、花咲に教えてもらいながらだったが、きっちりどの教科も終わらせている。
「まああれだな、馬鹿としか言いようがないな」
「ひっで! 俺雉学祭頑張りすぎたから魂抜けてたのー! そんな状態で宿題なんて出来るはずないじゃん!」
「その割には元気に遊び回ってたな」
う、と言葉を詰まらせる戸田を見て、俺は呆れからくる溜め息を吐く。
こうなることは目に見えているだろうに、それでも遊びたいという欲求に負けてしまうのが人間の性だな。
「あーもうだるいこんなのやりたくねーの助けて聖ちゃん」
「俺だってやりたくない」
「聖ちゃんのケチんぼー!」
ぶー、とぶたの鳴き真似をしながら、戸田は机の上にある宿題と思わしき薄っぺらい冊子の上でシャーペンを走らせている。それを横目で見ていると、違和感を抱いた。確か俺の記憶では、そんな薄っぺらい冊子は無かったはずだ。
身体を起こして、戸田に気付かれないようにそっと上から戸田の手元を覗き込むと、分数の計算問題がちらりと見えた。
は? 分数? しかもなんだこの小学生のワークみたいな問題の数々は。
「なあ戸田」
「ん?」
「それ、本当に夏休みの宿題か?」
「え? ちょっと待ってそんな怖いこと言わないでよ聖ちゃん」
俺からの指摘に、戸田は若干引きつった笑顔で冊子の表を確認する。瞬間、顔が衝撃で凍り付いた。
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