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寝る準備をささっと済ませ、いつの間にかTシャツを着ていた橘に連れられて寝室へと入った。
寝室には俺の部屋のものよりも広いクイーンサイズのベッドが鎮座している。代休中に、何度か睡眠をとらせてもらったベッドだ。マットレス等も更に良いものを使っているのか、寝心地は普段寝ている自分のベッドより明らかに良かった。
しかし、だ。このベッドでは寝るときはいつも一人だったので、何も考えずに連れられるがまま来てしまったが、もしかしなくてもこれは二人で寝るつもりなのだろうか。
一直線にベッドに向かう橘に、声をかける。
「ここに二人で寝るつもりか?」
「ああ、何か問題あるか?」
「さすがに二人じゃ狭いだろ」
一緒に寝るのが女性なら問題ないだろうが、俺は男で一七〇センチを優に越えているし、細身ではあるがひょろいわけではない。橘に至っては一八〇後半で、体つきもがっしりしている。
そんな男二人が、いくらクイーンサイズのベッドとはいえ一つのベッドに寝れば、いささか窮屈だろう。
だが、橘はそんなことはお構いなしらしい。ひょい、と俺の体を軽々と持ち上げて、そのままベッドに放り投げる。柔らかなマットレスが俺の体を包むようにぼふん、と沈んだ。
「っう……!」
「狭いとかどうでもいい。むしろ狭い方がいい」
そう言いながら橘は悪戯な笑いを伴ってベッドへと上ってくる。
「狭い方がお前に引っ付けるだろ?」
「断固拒否だ。離れろ」
端に逃げた俺へ近付こうとしてくる橘を、両手で精一杯押し返す。しかし橘の体はびくともしない。どうなってんだこいつ。岩か?
ふ、と嘲るような息を吐いて、橘が俺の腕を掴む。
「おい、俺のベッドだぞ。好きにさせろ」
「先にベッドに乗ったのは俺だ。早い者勝ちだ」
「俺が放り投げただけだろ」
「そもそも人を放り投げるな」
「……ま、寝よう」
あ、逃げやがった。
橘はあっさりと腕を解放し、何をするでもなくそそくさとベッドの右半分に仰向けで寝転び、そのまま目を閉じた。俺も左側へと仰向けになり、しばらく隣の気配が動かないかと身構えていたが、数分もすれば静かな寝息が聞こえてきた。それに安心して、俺も目を瞑って久々のベッドでの睡眠を開始する。
いつもの固い地面ではない柔らかな感触に、緩やかな眠気が誘発されて、意識を落とす直前のことだった。
もぞ、と橘が動いて、俺に抱きついてきた。
「た、橘?」
驚きで意識が覚醒し、咄嗟にその腕から逃れようと体を左に向けるが、後ろから抱きつかれる形になっただけだった。その状態のまま、恐る恐る橘に呼びかけるが、返事はない。寝返りを打っただけだったのだろうか。
そう思った瞬間、橘は俺の腰に回していた右手で、俺自身をスウェットの上から撫であげた。もう一方の手はTシャツの裾から侵入し、胸にある小さな尖りを弄り始める。
「っ、ちょ、たちばなっ」
それぞれの手の上に俺の手を重ねて引き剥がそうとする。だが、それよりも早く自身を弄られ、快感が背筋を突き抜け、手に力が入らなくなる。
「っあ、や、め……っ、ふ……」
俺が何を言っても、橘は一言も喋らない。弄られ続ける乳首と自身は段々と勃ち上がり、与えられる刺激に耐えるのが辛くなってくる。食い縛る歯の間から漏れる息に熱が混じり、時折抑えきれない喜悦の声が静かな寝室の空気を震わせた。
ぐにゅぐにゅと俺自身を布越しに扱いていた橘の手が、遂に下着の中にまで入り込んで直接自身を掴む。
「ああぁっ!」
今までとは違う直接的な快感に、止め損なったよがり声が口を衝 いた。そのまま手が上下に何度か動けば、すぐに限界まで勃ち上がった一物が、スウェットまでをも先走りで濡らしながら押し上げるのが潤んだ視界に入る。
更にもう一度上下に擦られ、襲い来るであろう欲の解放時の強烈な快感に耐えるため、強く目を瞑った。
が。
「……ぐー……っ」
ん……?
何の声だ、これ。
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