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まさかと思いつつ顔を後ろへ向ければ、ご機嫌そうな橘の寝顔が視界いっぱいに映る。
……なるほど、橘は寝ぼけて俺の体を弄っていたわけだ。悪夢しか見れない俺の横で、こいつは他人の体をまさぐるような卑猥な夢を呑気に見ているのだろう。
別に夢の内容にケチをつけるわけではないし、俺だってこの先を期待していた訳じゃない。訳じゃないが、橘が手を出してきたにも関わらず寸前で止めたのは事実だ。
「こんの……」
寝ぼけて無遠慮に触ってきたこいつにも、そんな奴に触られて達する寸前まで感じてしまった自分にも腹が立つ。ふつふつと心の内に湧き上がる怒りの火は、瞬く間に頭まで燃え広がり猛炎へと姿を変えた。
俺の頭が橘の額に触れるか触れないかぐらいの状態で狙いを定める。そして、一度ぐっと顎を引き、勢い良く顔を振り上げるように、後頭部で頭突きをお見舞いした。
「変態野郎がぁああああ!!」
「ぐふぁっ!」
俺の石頭が見事橘の頭にクリーンヒットした。その瞬間、橘がぐっと両手に力を入れて後ろにのけぞったため、乳首は遠慮なく押し潰され、自身は強く握り込まれて扱かれるような状態になる。
「っぁああ!」
限界ギリギリだった俺は、その衝撃に耐えきれず、欲を吐き出してしまった。
俺が出したものでぐっしょりと濡れる下着。当然、俺のものを弄っていた橘の手にも精液はかかっているはずだ。先の一撃で覚醒した橘が、感じるはずのないねとついた手の感触に気付いたらしく、荒い息を吐く俺の耳元で驚いたような声を出した。
「ふ、藤原? ん? え、何だこれ」
自分が元凶のくせに戸惑う橘。俺は恥ずかしさと怒りで顔に熱が集まり、声にならない声を出す。
「っ~~!」
「まさか夢精か……?」
「ふざけるな! お前が弄ったんだろうが!」
俺の性器を握っているのに全く見当違いのことを言う橘に、つい言い返してしまう。すると、自身を握っていた橘の指が再びゆるゆると動き出した。
「な、っあ、やめ、っ」
「くそ、夢かと思ってた。現実ならもっと早く起きときゃ良かった」
橘の言葉で、橘が見ていた淫夢の相手が俺だったことを知る。あわせて胸を弄る動きも再開され、一度達して敏感になっていた俺は、先程よりも明確な意思を持った愛撫に抵抗することもできず、情けない声で喘ぐしかなかった。
「ひとを、勝手に、ぁ、ヤるな、んんっ」
「仕方ないだろ、好きなんだから」
痺れるようなバリトンボイスが耳元で囁き、そのまま耳朶 に舌を這わされる。それにすら感じてしまう自分が本当に情け無い。今すぐにでも勃ってしまっている自分自身を、握り潰したい衝動に駆られる。
「も、っほんとに、やめ、ぃあっ……!」
「もっと、もっと声聞かせろ」
どんどん硬さを増していく陰茎を強く擦り上げながら、橘が更に囁く。ぐっ、と尻たぶを割り開くように硬度を保った熱いものが押し付けられ、体がびくんと震えた。
「……藤原の痴態を見てたらこうなったんだが」
「知るか、っふ、あ、あぁっ」
「──イけよ」
耳元で吐息たっぷりに吐かれた言葉が引き金になり、俺は体を反らせて橘の肩に顔を埋めながら下着を更に汚した。短時間に二度も欲を吐いた体は怠く、俺は急に襲ってきた眠気に抗えずに、そのまま目を閉じて眠りについた。
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