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「っ、んっ……ぅ!」  ねっとりした粘液に、手のひらとは段違いに柔らかな弾力。そして、太ももに引っ付いている体温よりも、二度ほど高い熱に包まれている。蠢くざらりとした表面の何かが、俺自身を中央付近から先端の方へ向かって嬲っていく。  二、三度その動きが繰り返されただけで真っ直ぐ立っていられなくなり、口を押さえていた手は自然と橘の頭を掴むような形になる。 「ひ、ぁあっ、や、あぁ……ッ!」  自身から背骨を伝うその刺激が脳に到達すれば、否が応でも口が開いてはしたない声が漏れた。同じ男同士だからか、橘は的確に俺の感じる場所を責め立てる。がくがくと震える太ももを橘が掴んでいなければ、今頃俺は床にへたり込んでいるところだ。  閉じていた瞼が無意識に開いていく。ぼやけた視界に映る、自身を咥え込みながら俺の顔を強い視線で射抜くその瞳にさえ犯されているように思えて、ぞく、と背筋が震えた。 「っや、ぁ……たちばっ、ッア、ぁあ……!」  ちゅぷ、と空気と水気が混ざりあった音を出しながら緩く先端を舌でつつかれたと思えば、裏筋を虐めるように動く口からじゅぽじゅぽと淫猥な音がわざとらしく個室内に響く。目から、そして耳からも侵食してくる性感が、ひたすらに俺の神経を犯して麻痺させていく。  痛いくらいに屹立した性器は、橘の口の中で今にもその精を吐き出さんとしている。限界を伝えるために開ききった口に力を入れて、荒い息を交えながら声を出した。 「っや、め、ハァ……ッ、も、でるっ、か、っあぁああ!?」  言い終わらないうちに一際強く亀頭部分を吸われて、ぎりぎりを保っていた我慢の糸がぷつりと切れた。腰が小刻みに震えて、言葉に表せない快感とともに尿道から勢い良く精が放出される。目の前が真っ白になる感覚からしばらく抜け出せず、今の自分の状態すらも頭から一瞬飛んでしまった。  ずず、と啜るような音と同時に、精を吐いたばかりで敏感になっている性器の先端に新たな刺激を覚えたことで、遠くに飛んだ思考が急速に戻ってくる。半分閉じ掛けた目で自分の下半身の様子をみて、ぎょっとした。  俺から顔を離した橘が、明らかに俺の精液をその喉の奥へ落としたからだ。男らしい大きな喉仏が、ごくんと上下にゆっくりと動いた。 「っば、馬鹿っ、おま、飲んで……!?」 「前もちょっと飲んだことあるだろ」  文章もまともに紡げないほど狼狽える俺とは対照的に、平然とそう言う橘。確かに舐めていた記憶はあるが、今回はそんな少しの量ではない。なんせ、直接口の中へ吐き出したのだから。 「それに、藤原から出たものは全部俺のものだからな」  ゲロも精液もだ、と橘はよく分からない持論を展開する。ゲロは先程断ったはずなのだが。しかし、オーガズム後特有の体の怠さもあいまって、反論する気力は無く、代わりに大きな溜め息を一つ溢しておいた。

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