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看護師が窓のカーテンを開けた。薄暗かった部屋に太陽の光が入り込み、鳥肌が立っていた俺の身体をじわりと暖めていく。
向かい側のカーテンも開けに行った看護師が、俺の顔を見て少し眉根を寄せた。
「随分顔色が悪いですね。かなり痛みますか?」
「……いえ、少し夢見が悪かっただけです」
俺の返答に看護師は心配そうに眉尻を下げて、「また回診に来ますので、何かあればお伝えください」と告げる。こくりと頷く俺を確認したあと、看護師が廊下に戻り、朝飯を携えて戻ってきた。
「一時間後にまた下げに来ますので。安静にしていてくださいね」
看護師の姿がドアの向こうに消えるのを認めて、昨日に引き続き味気ない朝飯を腹に入れ始めた。しかし、あっさりとしたメニューで量も少ないのに、やけに胃がもたれる。遂には嘔吐感が胃からせり上がってきて、仕方なく三分の二ほど残してスプーンを置いた。
普通に体を起こしていることすら辛く、ベッドに寝転がる。これならまだ肘が痛い方がましだ。
左手で右肘をギプスの上から撫でる。もう一度確認のためにそのまま肘付近を叩いてみたが、襲い来るはずの疼痛はなかった。
「本当に……治ってる、のか?」
もしそうだとしたら、まるで──。
『化物じゃないか、ってか?』
「ッ──!」
心の中の言葉を別の声が代弁した。一瞬止めてしまった息を吐いて、勝手に心を読むな、と脳内の声に向かって文句をつける。
『仕方ねえだろ。嫌でも聞こえてくんだからよ』
言葉のわりには楽しそうな声色だ。いまいち味方か敵か分からない。
それにしても、俺から神弥に対しては全てが駄々もれ状態なのに、神弥の心情が読めないのはどうしてなんだ。神弥の考えていることが分かれば、もっと色んな謎が簡単に解けそうなのに。
『そりゃあ、オレはお前にとっちゃ単なる異物だからな。でも、オレからすればお前は寄生先の宿主だ。寄生の意味は分かるか?』
特段高い音で発された最後の一言は神弥の心が読めなくても分かる。完全に馬鹿にされている。
寄生──一方的かつ永続的に栄養などを収奪する行為。俺の考えが神弥に漏れるのは防げないし、神弥の心を読むのも諦めろということか。
苛立ちを抑えながら──これも神弥にはバレてしまっているだろうが──質問を投げかけた。
俺の肘は治っているのか、と。
『ああ、ほとんど治ってる。さすがに完治ってとこまではいってねえけどな』
やはり痛覚がおかしくなったのではなかったようだ。ならば次に知りたいのは、何故そんなことが起きたかだ。少しばかり他人よりも傷が治るのが早いとはいえ、骨折を一晩で治すような治癒能力があるわけがない。
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