三木の浮かべる笑みは、万人が惹かれるような……とても、魅力的な笑みだ。 　拗ねたような、だけどどこか落ち込んだような表情を浮かべる間島を見上げたまま、三木は笑みを浮かべ続ける。 「ごめんね、まー君。いっぱいご飯買ってきたから、なくなるまではおうちにいられるよ」 「なくなったら？」 「一緒にお買い物しようね」 「…………ママがずっと、手……繋いでくれるなら……」 　三木の腕から手を放し、間島は自身の頭を撫で続ける三木に抱きつく。 「……ママ、いい匂いする」 「えっ？　そ、そう……かな？　どんな匂い？」 「ミルクの匂い」 　当然、三木はスーパーに出掛けただけ。どうしてミルクの匂いがすると言われたのか、思い当たる節が無い。 　自分の匂いを嗅ごうと身じろぐと、間島の腕に力が籠められる。 「ママ、好き」 「え、っ。あっ、ありがとう、まー君」 「ねぇ、ママ」 　自身の身じろぎを『逃げ出そうとしている』と勘違いされたかと思い、三木は一瞬だけ戸惑う。 　が、間島に呼びかけられ……三木は顔を上げた。 　──そして、予想外の言葉をかけられる。 「お腹空いた。から……ママのおっぱい飲みたい」 「……ふえっ、あっ、ちょっと……っ！」 　間島の言葉を理解するより、少し早く。 　──間島は三木を、フローリングに押し倒した。 「ま、待って、まー君っ！　ご飯作るから、そっちを──」 「育児放棄だ……」 「ち、違──」 「じゃあおっぱい」 　戸惑う三木の言葉を遮り、間島は三木の服に手を添える。 　当然、三木は抵抗しようと間島の手首を掴んだが……言動が幼くても、間島は成人男性。しかも、三木よりも立派な体格だ。 　抵抗虚しく、間島は三木の服を胸が露出するまでたくし上げた。 「まー君……っ」 「……ダメ？」 　覗く三木の体は、どう見たって男だ。当然、母乳なんか出ない。三木本人は当然分かっているし、間島だって分かっている。 　それでも……間島は押し倒されている三木に、甘えるような瞳を向けた。 　──そして三木は、そんな間島に弱いのだ。 「……甘えん坊さんだね、まー君は」 「イヤ？」 「ううん」 　手入れのされていないボサボサの黒髪へ手を伸ばし、三木は間島へ笑みを向ける。 「──乱暴にしちゃ……めっ、だよ？」 　そう言って笑う三木は、やはり。 　……どこまでも、美しかった。