4 / 505
幼き誓い 3
アーチ型の窓の外では、さっきから雪がしんしんと降り続いている。
「瑠衣、この挿絵を見て」
「とても綺麗ですね」
「うん、僕はこの場面が一番好きだ」
「お優しい坊っちゃまらしいです」
瑠衣と和やかに話していると、装飾が沢山施された重たい木の扉がギィと音を立て開き、お父様が息を切らして入って来た。
「柊一! やっと産まれたぞ! 」
「わぁ本当ですか」
「さぁお母様の所に行こう」
「はい」
逞しい父に手を引かれ、緩やかなカーブを描く階段を下りて行く。紫色の絨毯がふかふかで足が滑りそうだった。
とうとう待ちに待った僕の『きょうだいが』この世にやってきた。
「お父様、赤ちゃんは男の子、女の子、どちらです? 」
「喜べ! 男の子だよ」
「わぁ!」
嬉しい! 僕の兄弟だ。
ずっとずっと欲しかった僕の弟が、とうとうやってきた。
「さぁ見ておいで」
「お母さま!」
「柊一、いい子にしていた?」
「はい! 瑠衣と一緒に本を読んでいました。お母様、お疲れでしょう」
「ふふっあなたはいつも本当にいい子ね。ずっと柊一にきょうだいをと思っていたのに、遅くなってごめんなさいね。やっとよ。やっと生まれてきてくれたわ! さぁこの子があなたの弟よ」
お母様が僕の髪を優美な仕草で撫でてくれた。それだけで幸せな気持ちで満たされた。次に柔らかい白い布に包まれた赤ん坊を見せてくれた。
わっ小さい……
とても小さいんだな、産まれたばかりの赤ん坊って。
「柊一が赤ちゃんの時とそっくりなのよ」
「あの……お名前はもう?」
そう聞くと母は嬉しそうに、父を呼んだ。
「雪の日に生まれたから、雪也《ゆきや》と名付けたのよ」
「わぁ素敵な名前ですね! 」
小さな手、小さな爪、まだ開かない目。
何もかも小さくて可愛くて、僕は一気に兄となったことを自覚した。
ともだちにシェアしよう!