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幼き誓い 3

 アーチ型の窓の外では、さっきから雪がしんしんと降り続いている。 「瑠衣、この挿絵を見て」 「とても綺麗ですね」 「うん、僕はこの場面が一番好きだ」 「お優しい坊っちゃまらしいです」  瑠衣と和やかに話していると、装飾が沢山施された重たい木の扉がギィと音を立て開き、お父様が息を切らして入って来た。 「柊一! やっと産まれたぞ! 」 「わぁ本当ですか」 「さぁお母様の所に行こう」 「はい」  逞しい父に手を引かれ、緩やかなカーブを描く階段を下りて行く。紫色の絨毯がふかふかで足が滑りそうだった。  とうとう待ちに待った僕の『きょうだいが』この世にやってきた。 「お父様、赤ちゃんは男の子、女の子、どちらです? 」 「喜べ! 男の子だよ」 「わぁ!」  嬉しい! 僕の兄弟だ。  ずっとずっと欲しかった僕の弟が、とうとうやってきた。 「さぁ見ておいで」 「お母さま!」 「柊一、いい子にしていた?」 「はい! 瑠衣と一緒に本を読んでいました。お母様、お疲れでしょう」 「ふふっあなたはいつも本当にいい子ね。ずっと柊一にきょうだいをと思っていたのに、遅くなってごめんなさいね。やっとよ。やっと生まれてきてくれたわ! さぁこの子があなたの弟よ」  お母様が僕の髪を優美な仕草で撫でてくれた。それだけで幸せな気持ちで満たされた。次に柔らかい白い布に包まれた赤ん坊を見せてくれた。    わっ小さい……  とても小さいんだな、産まれたばかりの赤ん坊って。 「柊一が赤ちゃんの時とそっくりなのよ」 「あの……お名前はもう?」  そう聞くと母は嬉しそうに、父を呼んだ。 「雪の日に生まれたから、雪也《ゆきや》と名付けたのよ」 「わぁ素敵な名前ですね! 」  小さな手、小さな爪、まだ開かない目。  何もかも小さくて可愛くて、僕は一気に兄となったことを自覚した。

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