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幼き誓い 5
雪也はスクスクと成長した。
「にーたま、にーたま」
「クスっ、そうじゃないよ。『にいさま』だよ」
「にぃ、い・さ・ま? 」
「そう!よく言えたね」
10歳も年下の弟は、目に入れても痛くない程の存在になっていた。
今日は雪の日に産まれた雪也の3歳の誕生日だ。
透き通るような肌は雪のように白く、黒目がちな大きな瞳は愛嬌がある。いつまでも見ていたくなる可愛い弟だ。
「まぁ柊一どうしたの? そんなにじっと雪也を見つめて」
「あっ母さま。いえ、雪也は本当に可愛い顔をしているなと思って」
「まぁ何を言いだすかと思ったら、うふふ」
「えっどうして笑うのですか」
「だって雪也はあなたそっくりに成長しているのよ。柊一の3歳の時と全く同じお顔よ。だから自画自賛しているようなものよ」
「そんなつもりは……恥ずかしいです」
「いいのよ。私はふたりの可愛らしい息子を持てて幸せよ」
「私も二人の頼もしい息子を持ってて幸せだよ」
精悍な父、優しく美しい母、可愛い弟。
暖炉の前での家族団欒。
外に降る雪は冷たくても、家の中はポカポカで和やかな誕生日だった。
「これ、雪也に僕からのお誕生日プレゼントだよ」
「わぁ、なあに?にーたま」
「絵本だよ」
「うれちい」
僕が雪也に贈ったのは、以前、執事の瑠衣から手渡された洋書を絵本化したものだった。
あの時見た挿絵がそのまま使われている。
本屋でこの絵本を見つけた時は、正直興奮した。
もう僕は13歳。おとぎ話は……とっくに封印したけれども、密かに愛してやまない世界だったから。
まだ3歳の幼い弟になら許されるだろう。
夢見ることは悪くない。
「すごく、きれいー!」
「今度読んであげるからね」
「うん!」
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