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幼き誓い 8
「雪也……寝ちゃったの?」
気が付くと、僕にもたれるように可愛い寝息を立てていた。
「ほら、ちゃんとお布団に入らないと、風邪ひいちゃうよ」
「ん……ムニャムニャ」
「クスッ」
子猫みたいに丸まって、ぷにゅぷにゅな小さな手を、赤ちゃんの時みたいに頭上にバンザイさせて……可愛いぬくもりが布団の中に広がって心地よいな。
兄弟の温もりって大切だ。
歳が離れた兄弟だからかな、本当に君のあどけない姿を見ていると、いつまでも守ってあげたい気持ちが募るよ。
このままスクスクと成長して欲しい。
「それにしても、雪……やまないな」
カーテンの向こうに、雪がしんしんと降り続いている気配を感じた。
とても静かな夜だった──
どうしようか迷ったけども、一人で絵本を読み進めてしまった。
お城に住んでいた姫は様々な苦難に見舞われ苦労して……もう駄目だという所で、白薔薇の騎士のような精悍な王子が登場しての誰もが憧れるハッピーエンド。
子供向けの絵本なのであっさりと描写されているが、王道のおとぎ話らしい展開に、心からうっとりしてしまった。
この白薔薇の咲く洋館は、僕の家に似ているな。
僕が雪也を守る。
でも……僕を守ってくれる人もいたら……
あぁ駄目だ、こんな考えは男らしくないだろう。
僕がこんな気持ちになるのは、誰にも秘密だ。
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