13 / 505

幼き誓い 12

   僕を必死に呼ぶこの声……  柊一坊ちゃま?  時計を見ると、いつの間にか夜中の1時近くになっていた。  こんな時間に悲鳴に近い叫び声。  何か良くない事が起きたのだ。  酷く嫌な予感しかしない!  僕はガウンを羽織り、ランプを持って、慌てて廊下を走った。  使用人の部屋を通りすがりにノックして、起きるように伝えた。  緊張が走る! 「坊ちゃま! どうされました?」 「瑠衣っ! 雪也の様子が変なんだ!」    坊ちゃまが抱く小さな塊は雪也様なのか。  肩で小さく息をすることを繰り返し、意識が混濁しているようだ。 「どっ、どうされたのですか」 「わ……分からない。夜中に起きたらうなされていて……胸が苦しいと、心臓を押さえているんだ!」  柊一坊ちゃまも動揺が隠せない様子で、ガタガタと震えていた。 「大丈夫です。落ち着いて。すぐにお医者様を呼びましょう」 「うっうん」 「うっ……ルイぃ……こわいよ。こわい」  心臓の辺りを小さな拳でギュッと抑えた雪也様が、うなされるようにつぶやいた。まだ本当にお小さいお子様なのだ。 「大丈夫ですよ。ルイがいます。しっかりなさってください!」  僕は雪也様を横抱きに屋敷内の医務室に急いだ。すでに騒ぎを聞きつけた使用人が集まって、灯りを灯し、暖を取っていてくれた。 「どうしましょう? 今宵は旦那様も奥様もいらっしゃらないのに」 「もう高先生には連絡したのかっ」 「もちろんしましたが、こんな時間のせいか、出られないのです。何度もかけているのに」 「なんだって?」  かかりつけ医は高齢だ。それに小さな子供の病気に慣れていない。  旦那さまに進言しようと思っていた矢先に、こんなことになるなんて。 「出られたか」 「いいえ、お出になりません。お休みなのかも」 「くそっ!」  こうなったら他を当たるしか。  小児科に詳しい人を誰か……  雪也さまの容態は明らかに非常事態だ。  町医者じゃ駄目だ!   もっと専門医を!  そこで、さっきの電話を思い出した。  そうだ……海里なら!  彼は、小児外科が専門じゃないか。  先ほどの電話で、連絡先を教えてもらったばかりだ。 「海里っ……頼む、出てくれ」  受話器を握りしめる手に力が入った。  

ともだちにシェアしよう!