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幼き誓い 12
僕を必死に呼ぶこの声……
柊一坊ちゃま?
時計を見ると、いつの間にか夜中の1時近くになっていた。
こんな時間に悲鳴に近い叫び声。
何か良くない事が起きたのだ。
酷く嫌な予感しかしない!
僕はガウンを羽織り、ランプを持って、慌てて廊下を走った。
使用人の部屋を通りすがりにノックして、起きるように伝えた。
緊張が走る!
「坊ちゃま! どうされました?」
「瑠衣っ! 雪也の様子が変なんだ!」
坊ちゃまが抱く小さな塊は雪也様なのか。
肩で小さく息をすることを繰り返し、意識が混濁しているようだ。
「どっ、どうされたのですか」
「わ……分からない。夜中に起きたらうなされていて……胸が苦しいと、心臓を押さえているんだ!」
柊一坊ちゃまも動揺が隠せない様子で、ガタガタと震えていた。
「大丈夫です。落ち着いて。すぐにお医者様を呼びましょう」
「うっうん」
「うっ……ルイぃ……こわいよ。こわい」
心臓の辺りを小さな拳でギュッと抑えた雪也様が、うなされるようにつぶやいた。まだ本当にお小さいお子様なのだ。
「大丈夫ですよ。ルイがいます。しっかりなさってください!」
僕は雪也様を横抱きに屋敷内の医務室に急いだ。すでに騒ぎを聞きつけた使用人が集まって、灯りを灯し、暖を取っていてくれた。
「どうしましょう? 今宵は旦那様も奥様もいらっしゃらないのに」
「もう高先生には連絡したのかっ」
「もちろんしましたが、こんな時間のせいか、出られないのです。何度もかけているのに」
「なんだって?」
かかりつけ医は高齢だ。それに小さな子供の病気に慣れていない。
旦那さまに進言しようと思っていた矢先に、こんなことになるなんて。
「出られたか」
「いいえ、お出になりません。お休みなのかも」
「くそっ!」
こうなったら他を当たるしか。
小児科に詳しい人を誰か……
雪也さまの容態は明らかに非常事態だ。
町医者じゃ駄目だ!
もっと専門医を!
そこで、さっきの電話を思い出した。
そうだ……海里なら!
彼は、小児外科が専門じゃないか。
先ほどの電話で、連絡先を教えてもらったばかりだ。
「海里っ……頼む、出てくれ」
受話器を握りしめる手に力が入った。
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