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幼き誓い 13
瑠衣の奴、本当にいいのか。
アーサーは、きっと、じきに結婚させられちまうぞ。
あいつは貴族の館の長男だ。
跡取りがどうしても必要になるだろう。
なぁお前たちの恋って……やっぱり、ままならないことなのか。
どうしようもないのか。
二人の運命の歯車は、なかなか噛み合わない。
あんなに愛しあっていても、叶わない。
所詮、愛だけじゃ……無理ってことなのか。
自分に自問自答してしまう。
無償の愛なんて、綺麗ごとなのか。
さてと、そろそろ寝るか。
ベッドサイドでの読書を終え、ランプの灯りを消した所だった。
部屋の電話がけたたましくなったのは。
誰だ? こんな時間に。
「もしもし?」
「海里!」
噂をすればって奴か。それにしても冷静沈着な瑠衣が随分慌てているな。
「どうした? やっぱりアーサーのことか」
「馬鹿! それどころじゃない! 海里は小児外科が専門だろう?」
「まぁ一応な」
「今すぐ来てくれないか」
「ん? 急患か」
「三歳の雪也さまの様子が変なんだ!」
「なんだって。お前が仕えている屋敷のか」
「あぁ、心臓を押さえてひどく苦しがっている」
「心臓? 主治医は?」
「それが……連絡が取れなくて」
瑠衣の慌てた様子に、嫌な予感が走る。
「場所はどこだ? 今すぐ行く」
「あ……海里、僕は何をすればいい?」
「応急処置の仕方は執事養成学校で習ったろう。あれをすぐに実践しろ!」
「わ……分かった」
「お前なら出来る! 落ち着け」
慌てて着替え、執事を呼んだ。
瑠衣の勤める屋敷は白金台か……我が家からそう遠くはないな。
「すぐに出かける! 車を」
「海里様、こんなに時間にどちらに?」
「急患だ! 」
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