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幼き誓い 14

「柊一様、雪也様をここに寝かせてください!」 「分かった。雪也、大丈夫か」 「……ママぁ……ママぁ……」  朦朧としながら小さな手を必死に彷徨わせているので、しっかり掴んでやった。  しかしよりによって……今日に限ってお父様もお母様もいないなんて!   まだ小さい雪也が、お母様を恋しがるのも無理はない。 「大丈夫だ。兄さまが付いているし、もうすぐお医者様がきてくれるよ」 「申し訳ありません。処置をするので柊一さまは、後ろで待っていただけますか」 「あっ……うん」  瑠衣がどうやら応急処置をしてくれるようだ。  瑠衣の陰に隠れて、雪也の様子が見えなくなってしまった。    それにしても雪也の小さな心臓が痛いなんて……怖すぎるよ。  お医者様……早く! まだなの?  どれくらい時間が経ったろうか。気が付くと僕は床に蹲り体育座りをして耳を塞いでいた。  壁に背中をぴったりとつけていた。  お手伝いの女性が行ったり来たりとバタバタ走り回る足音だけが聞こえる。  僕の手は、まだ何の役にも立たないんだな。  弟を助ける所か、これでは足手まといだ。  そのことが悲しくて視界をシャットアウトしてしまった。  本当に情けないよ……雪也の兄なのに。 「柊一様、いいですか」 「えっ? 」    突然肩を揺さぶられたので顔を上げると、瑠衣が心配そうに見下ろしていた。瑠衣の白い肌はいつもより赤みを帯び、サラサラな黒髪も汗ばんでいる。  雪也のために必死に応急処置を施してくれたのが伝わってくる。 「雪也は?」 「今から病院に連れて行きますので」 「えっお医者様は? 」 「とっくに到着して診てもらいました。すぐに入院して精密検査をした方がいいみたいですのでお連れします」 「僕も行くっ」  必死にそう訴えたが、瑠衣に制されてしまった。 「柊一様はここでお待ち下さい。今宵はご両親さまも不在です。あなたがこの家を守らないと」 「うっ……」 「瑠衣、行くぞ。車を回してくれ」  見知らぬ誰かの声が廊下から聞こえた。  この人がお医者様なのかな。 「では行きます。柊一様、よろしくお願いします、今宵はあなたがこの家のご当主代理です」 「待って! 瑠衣」  怖い! 一人は怖い。  そんな甘えた言葉を叫びそうになって慌てて呑み込み、廊下に出ると、白い白衣を翻した背の高い男性の後ろ姿が目に入った。     一瞬、その長い白衣が、まるで騎士のマントのように見えて目を擦ってしまった。  どうやら雪也を抱きかかえているようだ。  どうか──どうかお願いします。  僕の可愛い弟の命を──助けて下さい。  

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