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幼き誓い 17

 気が付いたら、羽根布団の中で丸まっていた。  今、一体……何時だろう。  夜中の騒動で、僕が漸く眠ることが出来たのは、明け方近くだったような。  分厚い遮光カーテンのせいで、部屋はまだ真っ暗だ。  いつもなら瑠衣が重たい扉をノックして入ってきて、カーテンを開けてくれる。  窓から朝日が眩しく降り注ぐので、僕はまだ覚めない目を擦りながら「おはよう」と挨拶をする。  そんな僕のことを、瑠衣が黒いスーツ姿で背筋をすっと伸ばして見つめてくれる。 『お紅茶をどうぞ』 『ん……ありがとう。瑠衣』  手元に熱い紅茶を運んでくれるので、それをゆっくり口にするとようやく目覚めてくる。  でも……今日はどんなに待っても、そんな日常はやって来ない。  ということは……瑠衣はまだ病院から戻ってきていないのだ。  ユキ……雪也、無事なのか。心配で心配でたまらないよ。  僕の可愛い弟なのに、僕の力では守れなかったことが悔しくて。  でもきっと、昨日のお医者様が助けてくれたはず。  そう信じている! 「柊一様っ……」  一人寂しく真っ暗な部屋、真っ暗なベッドで震えていると突然ドアが開き、瑠衣の声がした。 「瑠衣っ! 」 「申し訳ありません。遅くなりました」 「帰ってきてよかったの? 雪也は無事なの? 」 「大丈夫です。治療を受けています。先ほど病院にご両親様が到着されましたので、私は一旦戻って来ました」 「本当? 雪也は無事なんだね、よかったよ……瑠衣……」  甘えるように瑠衣にしがみついてしまった。  幼い頃からずっと傍にいてくれた瑠衣が戻ってきてくれた事にほっとして、小さい頃に戻ったかのように、そのまま泣いてしまった。 「うっ……うう、雪也が死んじゃうかと思った、怖かった」 「柊一様……どうかご安心をなさってください」 「なんの病気だったの?」 「……心臓が少しお悪いようです。身体に負担をかけるような激しい運動は駄目ですが、きちんと通院治療して、中学生になった頃に手術をすれば……」 「そんなに心臓が悪かったの? 知らなかったよ」 「私が至りませんで……」 「瑠衣のせいじゃないよ。僕が気付かなかったせいだ」  瑠衣はいつものスーツ姿ではなく、慌てて着替えたらしく見慣れぬ私服姿だった。  らしくない姿に、どんなに彼が焦っていたのか伝わってくる。  いつもきちんと撫でつけている髪も乱れて……  瑠衣ってまだ随分若いんだなと、その時ふと思ってしまった。 「あの……泣いたりして恥ずかしいよ。瑠衣も疲れただろう。僕は自分で支度するから、一度着替えておいで」 「申し訳ありません。ですがそんなわけには」 「いいから。これは命令だよ。僕の言う事を聞いて。瑠衣は一晩中奔走していたんだ。疲れていて当然だ」  だって……いつまでも泣いているわけにはいかない。  これからますます雪也を守るらめにも、兄らしく、この家の跡継ぎとして、しっかりしないと。

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