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予感 4

 予感……  予感には、二種類ある。  いい予感と悪い予感。    どちらにせよ、今日……何かが起こる予感を胸に感じる朝だった。  旦那さまの執務室に、朝一番に来るようにと言われていた。  何事だろう? 思い当たる節がなく首を傾げながら入ると、中には柊一様と旦那さまが立っていた。  柊一様はどことなく思い詰めた表情を浮かべている。 「旦那さま、何か御用でしょうか」 「……うむ」  暫しの沈黙の後、言い渡されたのは……突然の解雇通知!! 「何故ですか……何か失態を?」 「いや、そうではない。一方的なこちらの都合なのだ。許して欲しい」 「都合って……」  あまりに突然なことなので、開いた口が塞がらない。 「理由は……理由は何でしょうか。私が納得出来る理由をお示し下さい」 「柊一はもう下がりなさい」 「お父様、分かりました。瑠衣……これは悪い話じゃないよ。ステップアップだそうだ。どうか話を受けて」  柊一様がそっと肩に手をのせて言い残した言葉の真意が掴めない。それよりも急な解雇宣告に動揺し、手が小刻みに震えてしまった。  しっかりしろ……情けない。  柊一様がドアを閉めると同時に、旦那さまが白い封筒を僕に差し出した。 「これは一体?」 「君の新しい勤め先だよ。先方からのたっての願いだ。瑠衣の腕を見込まれての引き抜きなのだ」 「どうして? ずっと精一杯お勤めしてきたのに、何故このタイミングで、放り出すのですか」 「それは……」  旦那さまは言い淀んでいる。  一体この家に何が起きているのか。 「これは柊一には話していないことだ。息子や妻には黙っていてくれるか」 「はい……」 「実は情けない話だが、先月紡績の事業で大きな損失あってな……本音を言うと君を優雅に雇っている場合ではなくなったのだ」 「そんな……だったら猶更です。無給でもいいので置いてください! ここに……雪也さまのお世話だけでも、せめて!」 「ありがとう。その言葉だけでも嬉しいよ。だが君の引き抜き先が、君を条件に、いい融資をしてくれるのだ。恥ずかしいが、それに縋りたい。どうか許してくれ」  旦那さまがガバっと頭を下げてくる。  ギョッとしてしまった。何故そこまで……  そんなっ──そんなことをさせてはいけない! このお方に。  執事としてあるまじきことだ。 「分かりました……私が行きますから、どうか、頭をお上げください!」  

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