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誰か僕を 16

注意・地雷ありの方は回避してください。 切ない展開ですが、この後のハッピーエンドを目指しております。 **** 「さぁ向こうで二人きりになろう。想像通り、間近で見る君は美しいな」  全身を舐めるような視線に震えた。  早くこの手を振り解いて逃げないと。  そう思うのに……僕が我慢してこの男に躰を明け渡せば、弟の命が救えるかもしれない。そんな信じられない考えが芽生えて、抵抗する気持ちが萎えてしまった。 「くくくっ、そうそう、いい子にしていれば援助は惜しまないよ」 「うっ……」  パーティー会場のカーテンの陰で男の手が僕の腰を撫でてくる。馴れ馴れしく下半身がくっつく程きつく抱きしめてくる。  その執拗な動きにゾクリと背筋が凍った。 「……や……めて下さい」 「まずは一晩でいい。いい子にしていれば手術代が一度に手に入るよ。少し我慢するだけだよ。さぁこの赤ワインを飲んでご覧。君は初心だから躰が強ばっているじゃないか。少し緊張を解そう」  渡された深紅のワインの底から怪しげな気泡が浮いていた。  きつく閉じた唇をこじ開けるようと、ざらついた太い指が撫でてくる。  腰を撫で回す手の平は布越しに僕のヒップにまで達していた。 「ふむ、桃のようにいいカタチだな。ほらグラスをちゃんと持って」  震える手にグラスを握らされる。  彼の指先は僕のスーツの隙間からワイシャツの釦《ボタン》を弄り出していた。  さらにもう一歩カーテンの奥へと連れ込まれる。  ここは死角だ、ますます闇に紛れてしまう。  どうして僕は逃げられないのか。  このままでは身を堕とすことになってしまうのに。でも僕が一晩我慢すれば、雪也の命を繋ぎ止められるのなら……  考えがまとまらないうちに、見ず知らずの男に翻弄されていく。  恐怖と緊張のあまり抵抗も出来ず言葉も発せられなくなっていた。  無理やりに唇を手でこじ開けらワインを飲むように勧められる。同時に男の指先が釦をふたつほど外し無遠慮に侵入してきた。 「なっ」 「静かにしなさい。ここで騒いだらいい笑い者だよ。冬郷家のご当主が。いいかい? これは味見だよ。買う前には試食が必要だろう」 「うっ……」 「うん、いいね。吸い付くように滑らかな肌だ。ここの感度はどうかな?」  中年男の指が僕の胸の突起に直接触れた時……激しく動揺した。  やっぱり僕には到底無理だ! 「やっ」  更にその指先で胸の尖りをぎゅっと抓られ、引っ張られた。 「ひっ……」  経験したことのない感覚と痛みに慄き、大きく悲鳴をあげそうになった。

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