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誰か僕を 17
「雪也くん、さぁ話して! それはどんな招待状だった? 差出人を覚えているかい?」
海里先生は焦りながらも、優しく僕を誘導してくれた。
「あの……場所は有楽町にあるホテルオーヤマでした」
「時間は?」
「確か……今日の夜6時からだったような」
「なるほど、それで主催者は? 差出人の部分を見た?」
「確か医療機関のような名前で……あぁごめんなさい。僕が見たのはそこまでです」
「その情報で十分だ。雪也くん大丈夫だ。俺はそのホテルにツテがある。だから今から行って様子を見て来るから、雪也くんは余計な心配しないように。いいね。心臓に負担をかけるから駄目だよ。今日は早く横になりなさい」
「はい……先生」
「そうだ、いい子だね。」
「海里先生がいてくださってよかった。大事な兄さまなんです。どうかっ」
「大丈夫だ。お兄さんに万が一何かあっても、必ず俺が守るから」
「おっお願いします」
「君は幼いようでしっかりしているな。お兄さん想いの優しい子だ。教えてくれてありがとう」
受話器を置いて、ほっとした。
よかった……これできっと大丈夫。海里先生に任せておけば……
僕はまだ子供で世間のことに疎いけれども、海里先生が兄さまのことを好きだという気持ちなら、ちゃんと分かっているよ。
だっていつも海里先生の眼は、僕の付き添いの兄さまの方を向いていた。
優しくあたたかな眼差しで、疲れ果てた兄さまを見守ってくれるのが嬉しかった。
ずっと僕を支えてくださった海里先生に、とうとう甘えてしまった。
でも…手の平を返したように去っていた不義理な親戚じゃなくて、海里先生に頼みたかった。
だって僕の大事な兄さまを守って欲しい人だから。
海里先生が、きっと助けて下さると信じている。
僕にとって先生は、母さまが読んで下さったおとぎ話のヒーローみたいに心強い存在なんだ。
あぁ……どうか何も起こりませんように。
僕はそういう勘が強いから、さっきから不安で押しつぶされそうだ。
先生、どうかお願い──
兄さまを助けて!
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