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光 5

 俺の車に乗るように促すと、柊一はビクッと躰を震わせ警戒してしまった。  無理もないだろう。まだ素性を全部話せていないし、いくら危ない所を助けてあげたとはいえ、君にとって俺は……残念ながら、まだ見ず知らずの男でしかない。    さっき『森宮海里』と名乗ったが、雪也くんの主治医とは気づいていないようで、正直がっかりした。  何だかもどかしいな。  俺はこんなにも君を想っているのに……  君は俺をまだはっきり認識していないなんて。  俺は……こんな恋をしたことがない。  どうやったら振り向いてもらえるのか。恋しい人がどうやったら俺だけを見つめてくれるのかが分からない。手探り状態なんだ。だから、つい自分を貶めるような言い方をしてしまい、反省してしまった。軽薄な人間だと思われたのではと心配にすら、なってくる。  俺を怖がらなくていい……どうか信じて欲しい。  そう心の中で強く念じたが伝わったのか、柊一は車に乗ってくれた。  俺は柊一の家を知っているので、行先を聞かなくても連れていってあげられるが、柊一はそのことに疑問も持たずに暫く無言の後、欠伸をしてくれた。  これは嬉しかった。  俺との時間、空間に……気を許してくれたのか。  俺を少しは信じてくれたのか。  誰かから信用されるとは、こんなにも心地よく力強いものなんだな。  俺はそんなことも知らずに、今までのうのうと生きて来たのか。 「眠いの?」 「……すみません」 「いいよ。眠っても」 「いえ……そんなわけには」  そう言いながらも……やがて柊一は静かに眠りに落ちた。  なんだか君は眠り姫のようだな。  俺のキスで目覚めたらいいのに。  そんな不埒なことを想う程、君の寝顔は可愛かった。  同時に酒の力で眠ってしまった君の穏やかな寝顔とは裏腹に、さっきあの部屋で見た悲痛な表情を思い出し、憤怒の炎が再び駆け上がる。    もう二度と、君をあんな目に遭わせたくない。  俺が守ってやりたい存在だよ……君は。  だから弟と家のために懸命に生きる……気高い君の自尊心を損なわずに、俺が守る方法を探している。  間もなく君の家に着けば、雪也くんと会え、そこで俺が長年雪也くんを診て来た主治医だと、素性が分かるだろう。  それから、申し出てみよう。  君を、君の家を……俺なりに援助したいと──  君にもう二度とあんな行動をさせないためにも、もう今までのようには、じれったく待っていられない。  切羽詰まった君は、本当に危なっかしい。  もう、放っておけない。

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