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光 6

 パーティー会場で僕を助けてくれた男性に送ってもらい、ようやく自宅に戻って来た。  いつもなら「お帰りなさい」と可愛い声で出迎えてくれる雪也がいないことが気がかりだったが、無事に帰って来た安堵感からなのか、突然吐き気が込み上げてしまった。 「うっ……すっすみません。少しここで待っていてください」 「大丈夫だよ。俺はここで待っているから、一度すっきりしておいで」  僕を労わる言葉……  トンっと優しく背中を押してもらえて、また涙が出そうになった。  駆け込んだトイレで、激しく嘔吐してしまった。 「ふぅ……」  でも吐いたことで、気持ちも落ち着いた。  口の中が気持ち悪かったので、歯を磨き顔も洗った。更にあの男に舐められた胸元がまだ気持ち悪くてボタンを外して拭くと、ひどく焦燥した顔が洗面所の鏡に映っていた。  あぁ僕は本当に疲れた顔をしている。  あんな目に遭ったことは、雪也にだけは知られたくない。  だから早く……早くいつもの僕に戻らないと!  ネクタイをしっかり締め直し、鏡に向かって呟いた。 『柊一、しっかりしろ、お父様との誓いを忘れるな』  あっ……森宮さんのことを玄関先に待たせたままだ。  慌てて戻ると、まだ玄関にいてくれたのでホッとした。 「あぁ良かった。顔色が戻ったね。少しすっきりしたか」 「はい……すみません。あの……よかったらお茶でも」 「……こんな時間にいいの?」 「ええ、あなたなら」  よく知らない人を夜遅くに家にあげるなんて……大胆なことをと思ったが、僕は彼を何故か最初から信じることができる。  この安心感って、一体何だろう。 「こちらのソファで待っていてください」 「へぇ内装もクラシカルで、いい部屋だね」  改めて明るい場所で森宮さんを見ると、男の僕から見ても目を奪われる程に整った凛々しくも甘い容姿で、背も高く、素敵な男性だと思った。  淡い色のスーツがよく似合って、漂う雰囲気も上品で紳士的だ。  カッコいい人……それだけでなく、僕を見つめる目元が優しい人。 「あっ……古いだけで手入れが大変です。……あの実は弟がいるので呼んで来てもいいですか」 「あぁ、ぜひ挨拶させてくれ」 「はい」  森宮さんはとても嬉しそうに微笑んでくれた。    雪也にも早く紹介したくなった。  そして……早く僕の大切な弟に会いたくなった。  雪也の部屋に向かう途中……僕は今までずっと暗黒の世界を彷徨っていた気分だったが、一筋の希望を感じていた。  森宮さんって……『光』みたいな人だ。  だから怖くないのか、ギラギラした人工的な光ではなく、自然光のような優しい光を纏う人だ。  ホテルの一室で……窮地に追い詰められた僕を救い出してくれた『光』は、森宮さんだった。 『光』 了

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