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希望の星 2

 処置が終わり、やっと雪也に会うことが出来た。  僕は雪也の発作にかなり動揺し呆然としていた。  ここまでの記憶がおぼろげだ。どうやって病院に来た?   霞がかかったように記憶があやふやで、気が付いたら病院の待合室にぽつんと座っていた。  パーティーで……恐ろしい目にあった。  でも誰かに助けてもらって、その人は雪也も助けてくれた。  早く、早く……思い出さないと、大切なことを忘れてしまう前に!  思い出したい、あの人のことを…… 「雪也……」  病院のベッドの上で落ち着いた寝息を立てる弟の姿を見て、ベッドの片隅で涙した。 「雪也、本当にごめんよ。僕が夜のパーティーに行ったせいで、すぐに発作に気付いてやれなかった。こんなにも身体が衰弱していたなんて……仕事にかまけて気付いてやれなくて……不甲斐ない僕を許してくれ」  やっぱり……夢を見ている場合ではない。  呼吸は安定していても真っ青な顔で横たわる弟を見て、一気に現実に引き戻されてしまった。  今日は一命をとりとめたが、この先はどうなるのか分からない。  弟の心臓はかなり弱っており、早く手術をしないと大人になるまでもたないだろう。もう……素人でも分かる状態だ。  とにかく治療費をなんとかしないと。だが手術にどの位のお金がかかるのか、僕は無知なので、見当もつかなくて……途方に暮れてしまう。  いよいよあの屋敷を売って暮らしていくしかないのか。それでもすでに大部分が抵当に入っている家だから、手放しても手元に残るお金は限られているのが現実で……もう、八方塞がりだ。  気が付くと病室から抜け出し、ふらふらと病院の屋上に来ていた。 「あっここは……」  屋上はお父様を誓いを立てた場所だ。  あの日の僕は、弟を守るという使命に燃えていた。  なのに……今はもう|風前の灯《ふうぜんのともしび》だ。 「世界はこんなにも美しいのに……」  仰ぎ見れば、無数の星が頭上に広がっていた。  高い建物に大きく伸びる樹木の新緑の匂いが濃く立ち込めてくる。  生命の息吹を感じながら、このまま弟とここから飛び降りたら楽になれるのでは……そんな馬鹿なことを考えてしまう程、僕は精神的に追い詰められていた。  両親との思い出の詰まった屋敷。曾祖父が建てたクラシカルな煉瓦の洋館には、この季節になると白薔薇が咲き、ツタが絡まり、趣を一層増す。  何もなければ……幸せだった僕の未来は、もうない。  弟まで失ったら、僕には、もう生きていく意味がなくなる。  ならば、いっそ……

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