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花の蜜 53

イラスト/ おもち様 @0moti_moti0 ****  それは『まるでおとぎ話』のような光景だった。  しあわせの輪というものが存在するなら、まさに今目の前にある。  海里と柊一さま、雪也さまが、手と手を繋いでひとつの輪になっている。    目映いまでの光の輪が生まれた。  柊一さまと雪也さまの艶やかな黒髪に太陽が降り注ぎ、天使の輪が出来ている。  僕の横に立つアーサーが感慨深げに言った言葉にハッとした。 「瑠衣……白衣を着た海里は、大天使ラファエルのようだな」 「ラファエル?」 「あぁラファエルという名前には、『天の医者』という意味があるんだよ」  肉体的にも精神的にも痛みや傷を抱えた時に、大天使ラファエルを呼ぶと、安らぎに満ちた空気が流れ、ストレスと不安を和らげてくれるのだとアーサーが教えてくれた。  まさにそれだ。 「瑠衣、君のそのカメラで、彼らのこの瞬間を撮ってあげるといいよ」 「あっそうだね」  旦那さまが遺していかれたカメラを構えると、旦那さまと奥様の気配を近くに感じた。  ファインダー越しに見る世界は、天に召されたお二人が見たかった世界だ。  カシャカシャ――  シャッター音に振り向いた柊一さまは、ハッとした表情でカメラを見つめた。 「瑠衣、そのカメラって、もしかして僕のお父様のものでは?」 「そうですよ。天国のご両親さまにかわって、このカメラが柊一さまと雪也さまの幸せを見届けます」 「そうか……ありがとう!」  しあわせ溢れる笑顔で、柊一さまと雪也さまが、こちらを見た。  もう大丈夫だ。  このご兄弟の未来は明るい――  海里が傍にいてくれるから、大丈夫だ。  

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