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その後の甘い話 『海里の幸せな日々』 朝・1

「柊一、どこか痛い所はないか」 「あっ、そういえば、ここまで抱いて運んで下さったので大丈夫でしたが、何だかさっきから実は……腰が怠くて……うっう」  しまった!  柊一が痛みを意識してしまった。  腰を押さえて、顔を歪めてしまった。  絶対、これは俺のせいだ。  必死に俺を受け入れ、ついてきてくれる柊一が可愛くて、止まらなくなってしまった。     全くの初心者相手に騎乗位を強請ったり、はぁ……俺も節操ないよな。  年上としての経験を生かして、翌朝負担の無いようにしてあげるべきだったのに、一度では足らず……あぁとにかく、だいぶ夜更けまで、かなり無理をさせた自覚は重々ある。 「どうしましょう……海里さん……僕、もしかして何か悪い病気でしょうか」  柊一は腰が痛い原因を、昨日の逢瀬のせいとは考えず、病気を心配している。全く……可愛い事を。年若く初心な柊一は、本当に言動の一つ一つが擦れていなくて純粋だ。 「大丈夫だよ。初夜を迎えると、受け入れてくれた人はそうなってしまうものだ。すまない。私がもっと制御すべきだった」 「えっ……」  思いもよらない事を言われたかのように、柊一が顔を赤くして目を見開く。  そして頭の中で昨夜の自分の姿を思い出しているようで、倒れそうな程に動揺していた。 「あぁ、動かないで。さぁ一度ベッドに戻ろう」  一歩も動けない柊一を横抱きし、ふかふかのベッドに沈めてあげる。 「海里さん……僕、変になってしまったのかも」 「どうして、そんなことを?」 「だって、少しあなたに触れられただけで、ここがドキドキしてしまうのです」  心臓を押さえて、切ない瞳で見上げてくる。  また可愛いことを。可愛すぎて、もっと困らせたくなってしまうよ。  こんな感情……ずっと抱いた事、なかった。 「そうだな。俺も心配になってきた。どこか怪我していないか、診てあげよう」 「えっ……あの」 「昨日無理をさせたので心配なんだ。俺たちが繋がった場所、傷つけてないか」 「え! あっあのっ、えっ」  優しく柊一の足に触れると、彼はビクビクと震えた。  明らかに意識している様子だ。  パジャマの布越しに手を滑らせ……蕾付近に触れると、いよいよ首を左右に振って泣きそうな顔になった。 「あっ──だ、駄目ですっ」 「ここ、痛くない?」 「それは……」 「ちゃんと先生に話して」 「……海里さん、あの、それは職権乱用では?」 「えっ」  参ったな。柊一は変な所で真面目になってしまう。 「ははっ、冗談だよ。このまま続けると君が熱を出しそうだからやめておくよ」 「ふぅ……」 「そうだ、無事に俺たちが繋がれたのは瑠衣の『魔法の小瓶』のおかげだよ、感謝しよう」 「あっ、はい」 「柊一、受け入れる側の方が負担が大きいのを、俺もよく理解している。何か痛い所とかあったらすぐに話すこと。俺は外科医だ。恥ずかしがるな。そして……昨日はありがとう」  チュッとおでこにキスしただけで、柊一は真っ赤になってしまった。  お互い全裸で抱き合った仲なのに、相変わらず初心なままなのが、柊一らしい。  そしてそんな柊一が、愛おしい。 「朝食の支度をしてくるから、もう少し休んで」 「ですが」 「俺に甘えて……いや、俺が甘えて欲しいんだ」 「……はい」  

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