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その後の甘い話 『庭師のテツの独り言』2

「テツ、次の休みはいつだ?」 「何を突然……明後日ですよ」  突然やって来て、何を聞くのかと思ったら……俺のプライベートを?  相変わらず風来坊のような人だ。 「なんだ平日か」  そして、あからさまに不満げな顔をする。  外ではポーカーフェイスの海里さんだが、俺の前では自由奔放だ。表情もコロコロ変化するし、言いたい事もポンポンと。 「何か不都合でも?」 「うーん、まぁ俺がいなくても大丈夫か。テツ、その日は暇か」 「ふん、どうせ暇ですよ。休みには街歩きをして、人様の家の庭をこっそり眺める位しか能がありませんからね。どうせ」 「なんだそれ? 危ない奴だな。どうだ? 堂々と人様の家の庭を手入れをするのに興味ないか」 「そんな家、どこにあるんですか」 「俺の新しい家さ」  海里さんが不敵に笑う。   「正直かなり庭が荒廃しているので、1年がかりで修復して欲しい。給金は払うから、お前に内々に頼みたくてな」 「給金なんていりませんよ。でも、なるほど……それでこんな勝手口から」 「この家には、もうあまり足を踏み入れたくなくてな。でもテツには会いたかったぜ」  まったく憎めない人だ! 海里さんは周りの人を魅了する。 「いいですよ。で、どこに?」 「ありがとうな。これが住所だ。屋敷に他人を入れるのは嫌だが、テツは別だ。信用できる!」 「それはありがとうございます」  そんなわけで俺は明後日、海里さんの新しい家に庭師として出向くことになった。  久しぶりに楽しい事を見つけた。  海里さんのお嫁さんの顔も拝みたかったので、楽しみだ!    あの海里さんを虜にした人だ。  さぞかし大人っぽく色っぽい……魅惑的な女性だろう。 **** 「ただいま」 「海里さん、おかえりなさい! 」  仕事から帰宅すると、柊一がパタパタと嬉しそうな足音をさせて出迎えてくれる。  菓子の講習もレストラン経営の執務も、全部この屋敷内で出来るように整えてしまったので、柊一は最近、滅多に外に出なくなった。  屋敷に閉じ込めるつもりはないが、外の世界で傷ついた柊一は羽を休ませてるように、自ら望んで大人しく過ごしていた。 「そうだ、早速庭師を手配したよ」 「え!……あの話、本気で? 」 「当り前だ。約束は守る」  そう答えると、柊一は頬を染めた。 「ありがとうございます。嬉しいです」  俺の一言に痺れてくれるのか。  本当に可愛い。  初心な反応を忘れない君がとても好きだ。 「明後日の10時に来るからね。彼はテツと言って信頼できる庭師なので安心していいよ」 「海里さんが手配して下さった方なら、もちろんです。僕も心を込めて、おもてなし、お手伝いします」 「そうだな。少し君も太陽の光を浴びた方がいい。ただし手を荒らさないようにね」  柊一の手を取って念入りに確認すると、手首の下にうっすらと赤い線が。 「ん? ここ火傷した?」 「あ、フライパンで……軽い火傷です。もうほとんど治っていますよ」 「躰を傷付けるな。心配になる」 「あっ……はい」  それから彼の手の甲に、優しく口づけをする。 「……今宵も……君を抱いていいか」  甘いお伺いと共に──

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