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その後の甘い話 『庭師のテツの独り言』6
ベッドの中では全てを晒し委ねてくれる柊一だが、まだまだ艶事には不慣れなのだ。
何しろつい先日まで女も男も知らない無垢な躰だったのだから、大切にしてやりたい。だから彼の躰に負担がかかり過ぎないように時間をかけて、繋がるための入り口を解してあげたい。
彼の戸惑いや不安を、俺の愛情で包み込んでいく。
覆い隠すというより、拭い去ってやりたい。
心も躰も、柔らかく溶かして……
「ん、あっ……あ」
「一度先に出そう。その方が君が楽になる」
「う、恥ずかしいです……僕ばかり」
「そんなことないよ。俺に感じてくれて嬉しいよ」
潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見上げてくれる君が、愛おしいよ。
俺だけの宝物なんだよ、君は。
ようやく手に入れた人だ。
俺はもしかしたら一途な恋を貫いた瑠衣が、羨ましかったのかもしれない。様々な障害や葛藤を乗り越え、アーサーの元へ、愛し愛されるために海を渡った瑠衣の背中が眩しかった。
俺と柊一はまだ出逢って1年も経っていない。瑠衣の恋路とは比べられないが、この先の俺の人生の全て……生涯を君に捧げる覚悟は出来ている。
「海里さん……海里さんっ……」
「大丈夫だ。ここにいるよ」
不安げに彷徨う手はしっかりと繋いでやり、無垢だった躰をそっと押し開いていく。
「んっ、そこ……やっ」
「気持ちいい?」
「うっ……変になりそう」
両胸の尖りは指の腹で撫でるだけで、過敏に反応してくれるようになった。そこは彼の下半身に直結しているようで、硬くなり張り詰めて、俺の腹にあたるのも可愛い。
俺の愛撫で確実に感じているのが伝わって、嬉しくなるよ。
染まった頬の色や潤んだ瞳。それでいて快楽に溺れそうなギリギリの所で男の矜持を捨てない、硬質な部分が見え隠れするのもいい。
先端から滲み出てきた蜜を、唇で包み、チュッと吸いあげてやると腰をか弱く震わせた。
「あ、駄目っ……もう、離して!」
「このままでいいよ」
彼の細腰を両手で掴み、背中がシーツから浮く程に強く吸うと、俺の口腔内に君の蜜が届いたので、ゴクリと嚥下してしまった。
「あぁ……や、飲まないで!」
恥ずかしそうに両腕を交差させ、顔を隠す様子もいじらしくて溜まらない。
「どうして? 君の愛が籠っているのに」
「ううぅ……もう、いつも言葉でも、僕を煽って……」
「挿れてもいいか」
「……はい」
少しぼんやりしている君の脚を開き、瑠衣からの贈り物をたっぷりと垂らす。
「あ……薔薇の香り……」
「そう、落ち着くだろう」
薔薇の優美な香りは柊一の心の安定剤のようで、強ばっていた躰から力がスッと抜けていく。
「海里さん……本当に男の僕を抱いて、感じてくださるのですね」
おいおい……この後に及んで最初に後戻りか。
そんな不安は全く必要ないのに。
「馬鹿だな。俺がどんなに君に欲情しているか知っているのに、それを聞く?」
「あっ……」
蕾に俺のものをあてがうと、柊一は目を見開き動揺する。
「ですが、お……大きくて……」
「ここ……毎晩のように君を求めてしまうから、俺の形を覚えてしまいそうだね」
わざと羞恥を煽る言葉を耳元で甘く囁くと、柊一の目元がますます潤んでしまう。
あぁこれでは、まるで好きな子に意地悪する悪ガキみたいだと苦笑しながらも、情動が止まらない。
今までのような、戯れ言から始まる睦事ではない。ただ真っ直ぐに、直球で君を欲しているのだと思う瞬間だ。
「そんな風に……言わないで」
「駄目か」
「駄目ではないです。こんなにあなたに求められて……幸せなんです」
兄として当主としての柊一を、俺だけの柊一にしてから、躰を深く繋げていく。
「ん……あぁ……あっ、海里さん、気持ち良くて……変に……なりそうです」
「嬉しいよ」
「あっ……う……っ」
抱きしめた君の躰を上下に緩やかに揺らせば、熱い劣情が迸り、艶めいた声が控え目に漏れ出してくる。
夜の静寂に広がっていく。
いつまでも聴いていたい。
夜が更けるまで……ずっと。
だが自重しろ、海里。
柊一の明日に、負担のないようにしてやらないと。
どこまでも大事にしたい気持ちと、自分の中に次々と芽生える欲情と葛藤する夜になりそうだ。
あとがき(不要な方はスルーでご対応願います)
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なんとも甘く執拗な情事でした。海里先生ってば。
柊一も、彼に熱く求められる事が嬉しく、懸命です。
しかし今回、庭師視点の話に徹するはずが、大きく脱線してしまい、申し訳ありません。
明日からはテツの話に戻しますね。
先日Twitterでキャラクターアンケートをしていました。
結果はなんと海里先生と柊一カップルが一番でした! 『幸せな存在』の宗吾さんと僅差でしたが♡
https://twitter.com/seahope10/status/1286862958992089088?s=20
また、新規連載『ランドマーク』では現在、瑠衣とアーサーが出逢った所で、高校生らしい若い恋が芽生えそうです。
https://fujossy.jp/books/18238
合わせて読んで下さっている方がいらしたら、感謝します!私の中の萌えを注ぎ込んでおります。
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