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その後の甘い話 『庭師のテツの独り言』 15

 寝室で食べる甘いデザートって……  歯磨きをしながら、ある行為に辿り着き、ポンっと顔が赤く染まった。  あっそういう事なのか。  僕は本当にダメだな。海里さんに甘く囁かれた時点で、空気を読み察知すべきなのに、こんな調子では、いつか海里さんに呆れられ捨てられてしまうのでは。    信じているのに、そんな事ばかり考えてしまうのも最低だ。  矛盾した気持ちに戸惑ってしまった。  二階に上がり、海里さんの寝室と僕の寝室、どちらに行くべきか迷って立ち尽くしてしまった。  動けない……どうしよう。  すると海里さんがやってきて、背後からふわりと抱きしめてくれた。 「どうした? どうして不安そうにしている?」 「あの……」 「ちゃんと話して」 「僕……このままで大丈夫でしょうか」  自分でも何をどう聞いていいのか、分からなかった。  すると海里さんは僕の顔をじっと覗き込んで、嬉しそうに微笑んだ。 「気付いてしまったのか。甘いデザートの意味を」 「あ、あの……僕のこと嫌になりませんか」 「どうして?」 「僕は……とても疎いです。その……あなたを喜ばしたいのに……全然出来ていなくて」  もう支離滅裂だ。仕事やマナーは完璧にこなしてきたが、恋愛について疎過ぎだ。 「疎い僕を……どうか嫌わないで下さい」  必死に訴えていた。 「あーもう、可愛い事を」  海里さんは驚くというより嬉しそうな顔で、今度は僕を正面から抱きしめてくれた。 「あの……嫌になりませんか」 「なるどころか、ますます好きになるよ」    スリッパが脱げそうな程きつく抱き上げられ、口づけを受けた。 「甘いか」 「はい……とても」 「では、どちらの部屋にいこうか」 「……海里さんの部屋に」 「いいね。君の声、沢山聴かせて」  僕の部屋は雪也の部屋と隣接しているので、声を控えないといけない。でも海里さんの部屋は離れているので……そういう意味だ。 「今、頭の中で必死に考えているね」 「あ、はい」 「深く考えないでいいよ。俺は君しか見ていない。他に興味なんて湧かないんだ。俺たちはまだスタート地点だ。長い年月をかけて柊一と夜を過ごし、君にいろいろ覚えさせたいから、俺の楽しみを奪わないで欲しいな」 「何を教えて下さるのですか」 「内緒。男の浪漫だよ」 「……僕も男ですよ。一緒に夢を見させて下さい」  僕の方から、口づけを深めていった。  深海に潜るように、深い口づけをした。 「ん……いいね。すごく深くて甘い口づけ……上手だ。君が俺を求めてくれる気持ちがダイレクトに響くよ」  褒められて嬉しくなる。 「さぁ行こう。この先は廊下ですることではない」 「あ、海里さん、またバスローブですね、もうっ」 「あぁすぐに脱ぐからね」  彼は僕をふわりと抱き上げる。  僕は男のくせに、彼にこうされるのがとても好きなのを知っているのだ。 「海里さん……好きです」  もっともっと気持ちを伝えたい。  僕にありったけの愛を下さる海里さんに。    

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