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その後の甘い話 『庭師のテツの独り言』 17
海里さんの部屋に、横抱きにされたまま連れて来られた。
この先は僕らだけの時間で、今から甘い夜が再び始まる。
夜毎、彼に愛される事が嬉しくて。
彼の大きなベッドに、ふわりと優しく下ろされた。
マットレスに弾む躰は、まるで波間に浮かんでいるように心許なく、慌ててシーツを手繰り寄せてしまった。
真っ白なシーツに皺が寄る、さざ波が立つように。
「ふっ白波のようだね」
「……そうでしょうか」
「さぁもう少し力を抜いて、そんなに縮こまっていては沈んでしまうよ」
「あ、はい」
でも、やっぱり最初は緊張してしまう。あの日から何度も抱いてもらっているのに。
「俺は柊一という船に乗りたい」
「……はい」
海里さんがはらりとバスローブを床に落とすと、中には何も着ていないので、すぐに全裸の躰が現れた。
「あ、あの……」
いつもながら……男同士なのに僕とは真逆の強靱な体躯に見惚れてしまう。特に胸元への筋肉の付き方が芸術的だ。
それに比べて僕は、本当に貧弱だ。こんな薄っぺらい躰で彼を魅了出来るのか不安になってしまう。
「さぁ柊一も脱いで」
彼に手際よくパジャマのボタンを全て外されてしまう。こういう素早い手付きはまさに『海里先生』だ。心臓外科医としての彼の手先は器用で繊細な動きをする。
そのまま僕に跨り露わになった胸元を、じっと見下ろされた。
彼からの熱くて甘い視線を浴びると、両胸の尖りが『視線』という刺激を受けてツンと立ち上がっていくのに戸惑ってしまった。
こんな過敏に反応するようになったのか。
やっぱり恥ずかしい。
「あの……男の僕の躰を抱いても……本当に? あっ……」
話の途中で、口をぴたりと塞がれてしまった。
「俺は君の裸を見つめるだけで、こんなに欲情してしまう。だからそんな事聞かなくても大丈夫だ。信じて……」
僕の手が、彼の下半身に導かれた。直にそこに触れてドキっとした。重たく硬く嵩を増したのは、男同士なら理解し、感じ合える大切な部分だ。
「あの、もう、こんなになって?」
「君の方こそ」
「あっ──うっ」
今度は僕のモノを握られ、ブルっと腰が震えてしまった。
「ん? もう少し刺激した方がいいかな」
彼が僕の胸の粒を舌先で転がしたり吸ったりすると、下半身に直結しているようで、嵩がぐんぐん増すのが自分でも分かった。
「あ、いや……」
「今日の君はやっぱり疲れているから、こうしよう」
「え? や……何それ」
「挿入だけじゃなよ、気持ちよくなる方法は。いろいろ試してみよう」
僕と彼のモノが一つに合わされ、彼の大きな手で包まれ……そのまま上下に扱かれる。
「ん……あぁ……っ」
お互いに敏感な皮膚がくっつき、摩擦で生まれる熱に翻弄されていく。
「やっ、怖い」
「大丈夫だ、俺につかまって」
「はい……」
彼の背に大きく手を回して、彼をギュッと抱きしめる。口を塞がれ甘い吐息で満たしてもらいながら、敏感な部分同士を擦られる刺激だけで果ててしまった。
「す、すみません。汚してしまって」
「一緒にイケたね、可愛かったよ」
あぁもうっ、どこまでも甘やかしてくれる。
「満ち足りたか」
「……」
どうしたんだろう? 日中いい汗をかいたせいか、今日はもっと抱いて欲しくなってしまった。こういう時って、僕から強請ってもいいのだろうか。
「どうした? 足りない?」
「足りないです……海里さん、甘いデザート、もっと欲しいです」
「いいのかい?」
「そうして欲しくて……あの、駄目でしょうか」
「駄目なはずない」
今度は僕の中へ深く彼を迎え入れ、たっぷり満たしてもらう。
甘い夜は、次第に更けていく。
「……朝寝坊はしたくないです。雪也を見送りたいので……ちゃんと起こしてくださいね」
僕は疲れ果て、意識を飛ばしたのだろう。夢の中でも、まだ波に揺られている心地だった。
海里さんからいただいた甘いデーザートで、もうお腹一杯だ。
躰が沈みそうになると、海里さんがぐっと抱き上げてくれる。
『柊一、俺に溺れてくれるのは嬉しいが……沈まないでくれよ』
なんだか可笑しくなって、夢の中でクスクス笑っていた。
大人のデザートって濃厚なんですね。海里さん――
朝が来たら、テツさんに頼まれた庭園の手入れを頑張ろう。そして明後日はまたテツさんの助手として、しっかり働こう。
朝起きてからの明日への楽しみを思い浮かべながら、僕は心地よい眠りに落ちた。
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