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庭師テツの番外編 鎮守の森 45
「初めてか」
そう問えば……桂人は返事の代わりに耳朶を真っ赤に染めた。
「安心しろ、俺もだ」
「テ……テツさんもなのか」
「意外か」
「……嬉しいよ」
桂人も俺も、誰かと躰を重ねるのは初めてだった。
俺はずっと暗示を掛けられていたのか、いや、そもそも庭仕事に没頭し、そんな暇も興味もなかった。
一方、桂人は……
この美貌でよくぞ無事で。いや、違う。捧げものとしての純潔を守らされていたのだ。長年、社に閉じ込められたまま。
彼の人生を解き放つ役目を仰せつかったのは、この俺だ。
雄一郎さんは彼を殺すが、俺は生かす!
「怖いか」
「ふっ……さっきも言った……テツさんなら……怖くないと」
互いに抱くのも抱かれるのも、未知の体験だった。
なのに不思議だ。
躰が指先が……勝手に動き出す。
感情よりも先に、互いの躰に触れたい、確かめたいと。
自分ではない、目の前にいる相手の躰をどこまでも探りたかった。
桂人を仰向けに寝かせ、裸身を丁寧に愛撫した。手のひらで素肌を撫で、骨ばった骨格を辿っていく。腰から臍のラインは格別の色香だ。平らで薄い躰だが、庭仕事で鍛えた適度な筋肉がついており、硬質な色気を醸し出していた。
「あっ」
小さな粒も口に含んで舌先で甘く転がしてやると、あえかな声をあげてくれる。
過敏な躰……
人はこのようの啼くのか。
「や……っ」
手を胸にあて大きく揉んでやると、頬を染め頭を左右に振った。
「おい、そんなに暴れるな」
「は、恥ずかしいっ、そんな所……」
「気持ちいいのか」
「う……」
唇を噛んで我慢してしまうのは、桂人に沁みついた悪い癖だ。指先で固く結んだ唇を突っついて解してやる。
「痛くはないだろう?」
「……でも、変……だ」
「感じているのだ。ほら、見てみろ」
彼の上半身を起こし、彼自身の股間に勃ちあがったモノを見せてやった。
「あ……こんなに」
男の本能で自慰行為は流石にしただろうが、人の愛撫で勃起したのは初めてらしく、羞恥に頬を染める様子にも愛おしさが募っていく。
「お、おればかり、いやだ!」
桂人は手を顔の前で交差させ、染まりゆく頬を隠してしまう。
「同じだ。俺もお前の躰に感じている! 」
桂人の手を掴んで俺の股間に触れさせると、ビクッと肩を震わせた。
「テツさんもこんなに……おれ、苦しいんだ。どうしたら……逃れられる?」
「俺を受け入れてくれ、お前を一人では行かさない」
「あぁ、テツさんに来て欲しい。ここに……」
桂人は無自覚に、自分の下腹を擦った。
「おいっ煽るな」
彼の太腿の内側を掴んで、左右に開いていく。酷く恥ずかしいようで、内側に力が籠って窮屈だ。
「もっと開けるか」
「くっ」
膝を立てた足を大きく開脚させ、俺は彼の中心に顔を伏せた。
「やっ!」
桂人の心と躰の緊張を解してやりたい。
入口をしっかり解してやりたい。
もう……一方的な痛い思いだけは、絶対にさせたくない!
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