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その後の日々 『冬郷家を守る人』 2

 テツと桂人を、冬郷家で雇用することになった。  人生は本当に何が起こるかわからない。  まさか庭師のテツに「誰か良い相手がいるといいな」と軽口を叩いたのが、あのような一世一代の大恋愛に嵌るとは。しかも瑠衣の過去をも引きずり出し、森宮家の不穏な歴史も、冬郷家と森宮家の関わりの謎も……すべて解明する糸口となるなんて、驚愕の連続だった。  ここ数日、謎解明のために奔走するのと、医師の仕事との両立で寝不足で、流石に疲労困憊だ。  風呂からあがりベッドボードにもたれ、ぼんやりしていると、小さな物音がした。いつの間にかウトウトしていたようだ。目を開けると、柊一が心配そうな表情で覗き込んでいた。毛布をかけてくれたようだ。  以前、俺が君に毛布をかけてあげたことがあったな。今日はその逆か…… 「ん……?」 「あっ海里さん、すみません。起こしてしまいましたね。あの、お布団にちゃんと入ってくださいね。お風邪をひかれてしまいますよ」  参ったな。俺としたことが転寝《うたたね》を? 「お疲れ様でした。全部、無事に終わりましたね。テツさんと桂人さんも先程ほど遅い夕食を終え、離れに行かれました」 「そうか。流石に俺も少し疲れたようだな」 「今日はゆっくり休んで下さいね……おやすみなさい」    柊一がベッドサイドの灯りを消し、そのまま部屋から出て行こうとしたので、細い手首を掴んで引き留めた。 「おいおい、どこへ行くつもりだ? 君の寝床はここだろう? 」 「あ、あの……今日はもうお疲れだと」 「疲れているから、君が欲しい」 「え、あの……」 「何か不都合が」 「とんでもないです……嬉しいです」  本音だ。疲れているからこそ野獣めいた気持ちで強く熱く飢えている……柊一の躰に。  そんな台詞は君を怯えさせてしまうので、素直に言えないが、熱い視線で訴えるように見つめれば、柊一の頬もすぐに上気してくる。 「おいで」 「……はい」  羽毛布団をめくり君をベッドに誘うと、ほっそりした躰を寄り添わせ、俺の懐にすっぽりと収まってくれた。 「んっ……」  抱きしめれば相変わらず華奢な躰だ。でも今回の騒動でも、柊一は要所要所で、当主としての決断を立派に下してくれた。  君の凜とした横顔には、いつもハッとさせられる。 「柊一は、ますますこの冬郷家の当主らしくなってきたな」 「……」 「どうした?」  少し不満そうな顔だ。 「……今は当主ではなく……あなたの恋人です」 「ありがとう。とても嬉しいよ」  優しい言葉が降ってくる。 「……甘えさせて下さい」    止めを刺すような甘い言葉が、俺を癒してくれる。

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