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その後の日々 『冬郷家を守る人』 3
「柊一に会えなくて、寂しかったよ」
彼の耳元で甘く囁くと、ぽっと耳朶を染めてくれた。
「ぁ……僕だけでは、ないのですね」
「当り前だろう」
「……嬉しいです」
いつになく甘えて来る様子が子猫のように可愛らしくて、俺の下半身も疼いてしまう。だから早急かとは思ったが、抱きしめていた柊一の躰をくるりと反転させてベッドに沈めてしまった。
俺もいつになく余裕がないようだ。
動いた拍子に、俺の胸元がはだけた。
「あ……海里さんっ、またバスローブ……」
「ん? あぁ……どうせ、すぐに脱ぐしな」
「……良かった」
安堵のため息を漏らす柊一だった。
「さっきから、どうしたんだ?」
「あの……僕は桂人さんのような大人っぽい色気もないし、瑠衣みたいに綺麗でもないですし……その、あの二人に比べたら、まだまだ子供っぽくて……魅力が……」
恥ずかしそうに、その後の台詞は呑み込んでしまった。
唇を噛みしめ、切なく俺を見上げて来る様子に、グッときた。
おいおい……何を言うのかと思ったら、そんな心配を?
「馬鹿だな。そんな心配は無用なのに。純真無垢な柊一。俺だけしか知らない可愛い君を早く抱きたくて、俺はずっと我慢していたのに……そんな風に煽るなんて反則だぞ」
「は、反則って……」
言葉より先に、チュッと額にキスを落とした。
柊一と白薔薇の庭園《Garden》で誓った日から、君を毎晩のよう抱いていたので、正直、1週間以上も離れているのは試練だった。
その間に、まさか君がそんな心配をしているなんて──
ベッドの軋む音が静寂の中、妙に大きく聴こえた。
今宵は、がっついてしまいそうだ。
今すぐ柊一を抱きたい急いた気持ちのせいで、俺の指先がいつになく不器用で、彼のパジャマのボタンひとつ外すのにも、随分手間取ってしまった。
「あ、あの……っ、海里さん……?」
「すまない。らしくないよな」
「いえ、嬉しいです。強く……求めてもらっているの、伝わってきます」
柊一が戸惑いながらも、自分でボタンを外して、素肌を見せてくれた。
俺の腕の中で、自らの躰を開いていく様子に見入ってしまう。誇り高き冬郷家の当主は今はいない。俺に一途に甘えてくれる恋人が、ここにいる。
「柊一のそういう所が、とても好きだよ」
小さな胸の尖りには唇で触れた。挟んだり引っ張ったり、舌先でちろりと舐めてやると、その度に切なく躰が揺れる様子も愛おしかった。
「……ふっ、あぁっ……」
小さな淡い突起が愛撫によって充血したように赤く染まり艶めいた存在になってくる。唾液に濡れた乳輪ごと大きく含んでやると、腫れたようにぷっくりとしてくるのも堪らない。
「いやっ……もう、駄目です」
鼻にかかった甘ったるい声で、柊一が俺の下で藻掻くので、唇をもっと下へ下へとずらし、臍、その下の淡い茂みの中で、揺るかやかに勃ち上がったものに口づけしてやった。
「足、開けるか、もっと」
彼の膝を立て左右に大きく開脚させて、俺の入る居場所を作った。彼は心許ない様子で、俺の背中に手を精一杯伸ばして縋って来た。
「海里さんっ、海里さん──」
「大丈夫だ。ちゃんと、ここにいるよ」
「……あぁ、んっ」
ひときわ、あえやかな声。
彼の大切な部分を吸い上げれば腰がゆらゆらと揺れて、切ない声が上がった。ぐずぐずになるまで舌で愛撫して、彼を啼かせ続けた。
一度先に放出した柊一は、肩で息をしていた。相当に気持ち良かったようで、呆然と脱力した様子に、思わず目を細めてしまった。
「これで分かった? どんなに俺が君を好きか」
「僕……あてられてしまったようです。テツさんと桂人さんの潔さに」
「ん? あぁ……あいつらは別モノだぞ。桂人はじゃじゃ馬だしな」
「え?」
「俺は……どこまでも慎ましい君が好きだ」
白薔薇のように気高く弟想いの優しく可憐な青年。いつも控え目で、それでいて、甘えん坊な柊一が愛おしい。
「もっとして欲しいか」
「……はい」
「何をして欲しい? 」
「ううっ……言わないと駄目ですか 」
「あぁ口に出して……求めて欲しい」
「う……っ」
「さぁ言ってごらん」
「……海里さんの……」
その先の言葉を、今日はちゃんと聞かせてくれ。
もっともっと……俺に甘えて欲しい。
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