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その後の日々 『執事レッスン』 1

 俺たちが日本に滞在する2週間、瑠衣は桂人につきっきりで執事レッスンをすると意気込んでいた。  なので今朝は朝から、ダイニングルームで紅茶を淹れるレッスンが延々と続いている。うーむ、もっと俺の相手もして欲しいのに…… 「こうか」 「……違う」 「よく分からない」 「覚えて」 「無理だ」 「僕がもう一度最初からやってみるから、よく見て」 「さっきから、ずっと見てる」 「だったら何故……」  瑠衣と桂人の押し問答が続いているのを、俺は雪也くんとリビングのソファに座ってニヤニヤと眺めていた。 「アーサーさん。桂人さんって、なかなか手ごわいですね」 「まぁここは日本だし型にはまる必要はないが、これは、なかなか……」  瑠衣が真剣になればなるほど、彼は己の意志を曲げない。  従兄弟同士と言えども、タイプが違い過ぎて面白いな。顔立ちは似ているのに性格は真逆で、桂人はなかなか気が強いようだ。 「ふぅーやっと出来た」 「ふぅ……じゃあ……そこに座っているアーサーにサーブしてみて」 「えっ! 俺?」  酷いな瑠衣、俺に毒見をしろと?  ジドっと目で訴えると、瑠衣は花のように微笑んだ。 「アーサー頼むよ。僕が頼れるのは、君しかいないのを知っているだろう? 」  うっ……その微笑みに俺が弱いのを知っていて、わざとだな。  これは寝所でたっぷりお返しをせねば。  さぁ今日は躰に何を塗ってやろうか。昨日は苺ジャム。その前は蜂蜜だったよな。あ……もしかしてそれが狙いで、俺に日中……こんな仕打ちをわざと? 「アーサー、君は余計な事を考えなくていいから」  瑠衣に、ぴしゃりと言われる。うーん、こういう時の君って、どこまでも冷ややかだ。クールビューティーと言えば聞こえはいいが……  よし! 英国紳士として最高のマナーで紅茶をいただこうじゃないか。 「桂人、しっかり見ていろよ」  そう思ったが、出された紅茶の水色《すいしょく》を見て唖然とした。 「ん? これって紅茶だよな? 」 「そうだ」 「本当に? 珈琲みたいに真っ黒だぞ。こんな色の出るリーフだったか」 「アーサー、今は味よりも飲み方の手本を見せて」  ううう……厳しいな。渋々と飲んだが、舌が痙攣を起こしそうだった。  うぉお……まずいっ、まず過ぎだよ! 「へぇ流石、外国人だ。優雅な飲みっぷりだな」  だが、こんな時に限って桂人が俺を誉めるから、澄まして飲むしかなかった。 「アーサーさん、とても美味しそうに飲んでいますね。瑠衣、僕も飲んでみたいな」 「だっ駄目ですよ! 雪也さまには、これは毒です」 「え? ど、毒って……」  雪也くんが俺を気の毒そうに見つめて、苦笑した。 「瑠衣が真顔でそんなこと言うなんて、びっくりした。でもアーサーさんの瑠衣への愛を感じます。とってもとっても献身的ですね」  大人びた発言に、俺と瑠衣は顔を見あわせた。   「はは、そうだろう。君は見る目があるな」 「ゆ……雪也様は、もう、何を言って」  瑠衣は明らかに照れていた。  ほら、ほら、せっかくのポーカーフェイスが崩れてしまうぞ。     あとがき(不要な方はスルーで) **** やっぱり……今日は時間もあったので、ちょこっと更新してしまいました。 私は彼らが本当に好きなので、平和な日々の楽しい話を書きたくなりました。時間が許す限り、短く更新していきたいです。読んで下さってありがとうございます。しばしコメディタッチかもしれません……♡  

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